One Earth Guardians
活動レポート

One Earthology Seminar 2024
テーマ「虫」

虫と共に生きる惑星(ほし)
1st round

One Earthology Seminar「虫」1st round のテーマは「“家畜”になった虫 —昆虫の福祉に向き合う」でした。想定するのは、食用昆虫が普及し、昆虫が人間の手によって品種改良され大量生産されるようになった社会です。そこで問題になるかもしれない食用昆虫の福祉について、仮想の「食用昆虫ウェルフェアに関するガイドライン案」に対し有識者として提言する設定で、議論しました。
ワークでは、虫にとっての福祉は、十分な餌を食べ、生存し、繁殖によって最も個体数が増加することにあるのではないか、という意見が多く挙げられました。私もそう考えた一人です。この考え方に従うと、虫の福祉を追求することは、人間が食用昆虫に期待することと重なる可能性が指摘されました。すなわち、虫の福祉のために、餌が十分にあり天敵などの死亡要因が少なく、成長と繁殖がしやすい環境を整えることは、質の高い個体を大量に生産したい人間の願望も叶えることになるということです。
これまでの家畜の福祉はしばしば生産効率と天秤にかけられる問題として認識されてきました。それと比較すると、家畜としての昆虫は双方の要求を満たせる点で、実は希望が持てる解決策なのかもしれません。一方で、人間の視点で勝手に昆虫の幸せを定義しているだけに過ぎません。それにも関わらず、人間にとって都合の良い定義となれば、人間の求めるところを満たすことが全て昆虫の福祉にもなる、といった極端な解釈に偏る危険性も孕んでいそうです。
将来、本当に昆虫の福祉を考えなくてはならない状況になるかはわかりません。しかし、現在はまだ倫理や福祉の概念が広く適用されていない昆虫を題材に、福祉を議論することを通して、そもそも人間が人間以外の動物に対して福祉を保障するとはどういうことなのかを考えるきっかけとなりました。その動物にとっての本当の幸せを人間が知る由はありませんが、あくまで人間の視点からより「幸せ」だと考える選択肢を、一度人間の利益と切り離して精査することが必要だと思いました。
(森林科学専攻 内藤 英理香)

2024.08.21

第14回LUC Lecture

Way-ing of Life: 人間の再定義

第14回LUC Lectureのテーマは「Way-ing of Life: 人間の再定義」です。異常気象や生物多様性の損失など様々な問題が起こる中、人間である私たちは地球上の生物としてどう生きるべきなのでしょうか。東洋文化研究所所長 中島隆博教授、農学生命科学研究科 高橋伸一郎教授のお話を伺いました。
エネルギー、食糧問題などの解決を、技術開発により図ろうと研究が進んでいます。ですが、技術の実装を目指す際に、その技術が将来に与える影響に対して、社会の理解が進まないという問題に直面します。個人の理解や意識変容を促すためには、人間の根本を見つめなおす人文・社会科学的な視点が私たち自身に求められると、高橋教授は個人の経験をもとに話されます。そこで重要なのが、実践することそのものを意味する「道/Tao」という東洋の概念からの、人間の再定義です。人間中心的なWay of Lifeから、人間を周縁化(provincialize)することで、他の生物との共存やつながりの形成を図り、新たな豊かさを見出すこと、これが中島教授が提唱される、「道」に適った人間のあり方「Way-ing of Life」です。
また、1つの価値観に落とし込むことで評価する近代科学の一面が、今の社会を形作っているという見方もできます。しかし、世界にはその土地の風土に根ざした多様な価値観が存在します。人文・社会科学と自然科学の視点を合わせることで、そのような価値観を学び、その学びを共有することが、新しい豊かさを発見するヒントになるのではないかと考えました。
(森林科学専攻 岸野 奏)

2024.07.17

実学研修
株式会社chicabi

地球と人の「幸せ」を考える

今回私たちは、「科学と哲学から考える、動物・人間・自然」というテーマで株式会社chicabi、株式会社千葉牧場の皆様のご協力のもと実学研修を行いました。今年度は人の「幸せ」や「環境意識の変容」を中心に考察を深めました。
株式会社千葉牧場の運営する千葉ウシノヒロバは子牛の預託事業とキャンプ場の掛け合わせにより新たな価値を生み出す施設であり、酪農に対する関心を高めるだけでなく、自然に囲まれた時間を過ごし都会的な価値観を顧みることができる場です。
私は、現場への訪問やスタッフの皆さんとの議論を通じて「環境問題への取り組み」を特別なこととして行うことに違和感を感じ、各々の自然への共感から自然を大切にする気持ちが素朴に湧いてくるようなあり方を目指したいと考えるようになりました。環境問題に対して技術による解決を目指すだけでなく、「自然への敬いを取り戻す」ような個人的かつ精神的な方向性も必要なのではないでしょうか。例えば、キャンプ場で五感を通じて積極的に自然を感じ取る訓練をすることで自然への親近感を深められるかもしれません。
抽象度の高い問いや議論が多く、十分な具体化には至りませんでしたが、「人の生活はどんな形に向かうのが望ましいのだろうか?」という根本の部分を問い直す研修となりました。日々の生活の中で見逃してしまいがちなものにどのように目を向けていくのか、今後も考えていきたいです。
(生命化学・工学専修 久我 美彩子)

2023.07 - 2024.03

実学研修
学生発テーマ:株式会社ワークライフスポーツ

「農学×サッカー」サッカーの力を活用した地域資源の持続可能な利用を考える

本研修は私ともう1人の受講生が、サッカーが持っている「人をつなぐ力」を農学に活かしたいと考えて始めました。株式会社ワークライフスポーツをアドバイザーに迎え、サッカーグラウンドや動物園などの長野市の公共施設を管理する一般社団法人長野市開発公社(以下、長野市開発公社)の皆様にご協力いただきながら、長野市をフィールドに活動を行っています。
活動を始める際にサッカーの力を活かして何を実現するかを考えたところ、地域資源を活用する小規模・循環型社会を実現したいという結論に至りました。では、どの分野で資源循環を作り出すのかということを考えたときに、畜産の分野が思い当たりました。私は3年前の実学研修で畜産農家に訪れており、畜産業による環境問題が現在は問題となっているものの、上手く行えば資源循環の手段となると感じていたためです。また、畜産業の課題として畜産生産物が安すぎるという思いがありました。適正な価格で買ってもらうために、サッカークラブの力を活用できるのではないかとも考えて、廃棄されているサッカーグラウンドから出る刈芝を家畜の飼料として利用することを考えました。
現在の産業構造では遠方から食料や石油製品などの資源を運搬することが多いですが、これは資源の消費だけでなく安全保障の観点からも課題であると感じています。ただ、地域内で資源を循環させたいと考えたときに、外部から購入するよりも費用や労働力などのコストがかかります。そして、そのコストを支払おうと思えるのが、サッカーの力であると考えました。
長野市開発公社が管理するサッカーグラウンドの芝の特徴として、自然の力を最大限利用することで農薬の使用が夏季の最低限のみに抑えられているため、動物が食べることも可能です。一方で、競技用の芝であるため飼料として用いた前例はなく、畜産農家で使ってもらうには壁がありました。そこで、長野市開発公社が運営する動物園で試験的に羊や山羊、小動物などに給餌を行いました。
他にも、刈芝を給餌して育てた羊肉の価格が高くても、消費者は買ってくれるのかを調べるために、アンケート調査を行いました。また、飼料以外にも排泄物処理を考えて、ミミズコンポストを行う株式会社みみずやとも連携を図っています。
研修の中では、「何をやることが100年後の地球のために意義があるのか?」という問いかけに何度も直面しました。すぐに出来ることを考えてみたときに、一見資源を活用できていそうでも別の資源を消費してしまっている場合もあります。刈芝を使えればそれでいいというわけではなく、刈芝を運搬して利用することによる二酸化炭素排出や労働力などのコストと、刈芝を資源として利用することによって削減されたコストを比較することが必要です。今出来ることを考えつつも、理想の未来を描いてそこから逆算する思考を忘れずに、今後も取り組みを続けていきたいと思います。
(生産・環境生物学専攻 津旨まい)

2022.04 - 2024.03

実学研修
株式会社重次郎中屋敷ファーム

循環型畜産を体験する

肉牛生産の持続可能性を考えて循環型畜産と飼料の国産化に取り組んでいる岩手県雫石町の株式会社重次郎中屋敷ファームのもとで、実学研修を行いました。2週間の研修の中で畜産現場を体験したり、子牛市場を見学したりし、色々な方々と関わらせていただきました。これまで畜産に興味はあったものの 、実際に現場に関わったことは無かったため、生産者の視点から畜産業を見たいと思い参加しました。
子牛の世話は肉体的な大変さだけでなく、命を扱うという点で集中力が必要だったり、ミルクの量や栄養の量の調整が難しかったりと想像以上に大変でした。国産飼料の生産現場も見学し、乾燥させすぎないようにしたり、一日置いて発酵させたりと中屋敷ファームの皆さんが考え抜いて飼料作りをしていることが分かりました。また、現在感じている畜産業の問題点やについても伺うことができ、自分が持ち合わせていなかった視点から物事を見ることができました。例えば、飼料作物の予想外の高騰や経営者の減少など、様々な障害が原因となって経営の持続可能性が揺らいでいる現状がありました。自分自身は食の流通や貿易といった、生産現場とは少し離れた分野に興味を持っていたのですが 、実際に食品を作っている方々の思いや悩みを聞いたり、自分で体験したりすることで初めて、生産現場で生まれる熱い思いや商品として売るために納得のいかないことでもやらねばならないという葛藤があることが分かり、「現場」に行く大切さを感じました 。生産者と消費者を近づけるにはどうしたらいいか、商業的な意味も含めた持続可能な畜産業とは何かをこれからも考え、行動していきたいです。
(理科二類 山﨑美怜)

2023.07 - 2023.12

実学研修
公益社団法人MORIUMIUS

サステナビリティ教育の現場を知る

「自然の中で循環する暮らしをこども達に届け、関係人口を育みながら町の未来をつくる」という内容で、公益社団法人MORIUMIUSの協力のもと、実学研修を実施しました。まずは現地での教育の実際を知るため、宮城県石巻市雄勝町の複合体験施設「モリウミアス」に滞在して、1週間ほどのプログラムのサポートに携わりました。その後は、現地での学びを遠方でも体験できるように家庭栽培キットの提案を行いました。
モリウミアスでは、地元で穫れた食材を調理し、残り物は家畜の餌、堆肥となって、巡り廻って山や海に還る、そんな循環型のくらしが実践されていました。その中で、プログラムに参加する子どもたちは自然と人間のかかわりについて学ぶとともに、親元を離れて過ごす1週間で成長していました。持続可能な社会を実現するにあたって、自然を愛し、主体的に行動できる次世代を育てるという、教育の意義について理解を深めることができました。一方で、参加者の多くが首都圏など、都会で日頃生活していることから、モリウミアスでの学びを継続して生活に取り入れていく難しさも感じました。それを踏まえて、「サステナビリティを日常に取り込む」というテーマのもと、、プログラム中に製作した竹の容器や、施設内で作られている堆肥など、モリウミアスで作った材料を使用した家庭栽培キットをお土産にすることを提案しました。提案の過程で、サステナビリティに関する我々のメッセージを子どもたちにどうすれば伝えられるのか、その難しさも痛感しました。
地球環境の保全には次世代の教育が欠かせないという課題意識を出発点に、今回の研修に参加しましたが、その教育の現場を目の当たりにするとともに、様々な課題もより明確に把握することができました。今回得た知見を踏まえて、持続可能な未来につながる提案をしていきたいと思います。
(緑地環境学専修 成川央庸)

2023.07 - 2024.02

実学研修
学生発テーマ:アステナミネルヴァ株式会社

学生が地域と関わりを持つことでもたらす効果を探る〜石川県珠洲市の方々と対話するツアーの企画を通じて〜

アステナミネルヴァ株式会社をはじめ、石川県珠洲市の方々にご協力いただき、「研究者的視点を有した関係人口の創出で奥能登の課題解決を図る」という実学研修を自ら提案し、行いました。
対象とした珠洲市は革新的な取り組みを行う生産者や経営者が多い一方、人口減少に伴い荒れた田畑・山林が増加するなど、課題も抱えています。
私は、大学で研究に取り組む学生が、地域の「人」と強い関わりを持つことで、その地域に経済的な効果以上の正の影響をもたらし、かつ人口減少に伴う問題を解決する糸口を掴めるのではないかと考えました。そのため、珠洲市を対象に、OEGsの学生を巻き込んで活動を始めました。
本研修では、「珠洲市の面白い人と出会う」というコンセプトを掲げ、学生と珠洲市の方々の対話に焦点を当てたツアーを企画し、OEGs受講生3名に参加してもらいました。ツアーでは、酒蔵から炭焼き職人、葉タバコ農家など様々な所に訪問し、それぞれの方の思いや、抱えている問題などを中心にお聞きしました。
本研修を通じ、私は、学生が「知」のハブとして地域に正の影響を及ぼす点に気付かされました。ツアーの最中、ある学生の研究テーマと珠洲市の炭焼き職人の試みが偶然合致したタイミングがあり、研究の知見を地域の方々に共有できる貴重な場を設けられたと感じました。このような学生のハブを活かし、人口減少に伴う問題解決の素地を作ることができたと考えています。
珠洲市は地震で大きな被害を受けましたが、研修で繋がった生産者や経営者にヒアリングを行い、珠洲市と関わりのある学生を巻き込みながら、長期的に活動を行いたいです。
(農業・資源経済学専攻 髙田瑛仁)

2023.02 - 2024.03

実学研修
学生発テーマ:熱海の森プロジェクト/認定NPO法人環境リレーションズ研究所

里山林再生に向けた市民参加型の森林管理を模索する

認定NPO法人環境リレーションズ研究所のご協力の下、熱海市の里山林を再生させる森林管理体制の提案と実現を目標とした、OEGs受講生有志によるプロジェクトに取り組みました。私は特に森林管理の担い手創出に関心を持って活動しました。
2年間の活動のうち1年目は、フィールドとなる放置里山林を訪れ、森林管理と利用が行われなくなり里山林特有の生態系が消失しつつある現状を目の当たりにしました。また、市内のイベントや交流会における地域住民の方々との交流を通して、市の産業や生活、地元で森林施業を行うNPOの普及活動についてお話を伺いました。2年目は、里山林管理の担い手確保に向けた具体的な解決策として、専門家以外が森づくり活動に関わる地域コミュニティの体制を提案し、行政や大学、企業との関係性を整理しました。最後に、森づくり活動の担い手養成を目的として、森づくりの知識や技術を座学とフィールドワークで学べるプログラムを企画しました。プログラムには地域内外の方々に参加してもらえましたが、人数は少なく、目標とした地域コミュニティの醸成には繋げられませんでした。
市内で地域活動をされている方々とのお話を振り返ると、些細な日常会話から生まれる信頼関係、長い時間をかけた活動に対する理解獲得の積み重ねによって、活動が支えられていることに気づかされます。離れた土地に暮らす私たちが2年間で得られる地域との信頼関係や情報発信力には、限界があったのかもしれません。また、放置林問題に直結しそうな取り組みに加えて、アクセスや地形が良好な森林で体験会を開く、参加者同士の交流の場を設けるといった、結果が出るまでに時間のかかる取り組みを、段階を踏んで実施することが必要だったと思いました。
これらの気づきを通して、課題に取り組む際は、1回の理想的な方法の実践により成果を得ようとするよりも、長期に渡り実践を繰り返す中で、人との繋がりや新たな課題を得て方針を調整することが重要だと考えるようになりました。これから地域課題に取り組む場面では、大目標を見据えつつ、地道な活動を継続することを心がけたいです。
(森林環境資源科学専修 内藤英理香)

2022.10 – 2024.02

実学研修
住友林業株式会社

自分の目で林業の課題を確認する大切さ

私は大学の講義で日本の森林の現状について教わったことをきっかけに林業に関心を持つようになった。樹木の二酸化炭素吸収能は樹齢50年あたりから伸びなくなるため、伐採と植林のサイクルが重要であると初めて知った。そして何よりもショックを受けたのは、林業従事者に対する補助が十分でなく、また、木々の管理が大変なために、伐採はしても植林を行わない事業者が存在することだった。大学の講義で林業の課題を知ることはできるが、その深刻さを想像することは難しい。現地を訪ねる必要があると考え、住友林業株式会社の力をお借りして実学研修に取り組んだ。
愛媛県新居浜市にある社有林を訪問し実際に植林地を歩いてみると、雑草が生い茂っているためにスギの苗木を見つけるのはとても難しかった。また、広大な土地の境界に沿って獣害対策のネットが張られていて、中には傾斜が急なところもあったため、その労力はどれほどのものか想像しながら見学した。ほかにも人工林・天然林・再造林地を歩く機会をいただき、それぞれの様子や樹種の違いを目で見て感じることができたのはとても良い機会であった。さらに、筑波研究所の見学では、住友林業の育苗に関する研究や木造建築物のための構造材の開発成果などを紹介していただいた。大学で講義を受けているだけでは知ることができなかった林業従事者の苦労、具体的には、苗木を避けて下草刈りをしたり狭い作業道で林業機械を駆使して伐採や運搬を行ったりすることの大変さを学ぶことができたため、実学研修に参加して良かったと思っている。解決したい林業の課題はたくさんあり、解決策の案を磨き提案することは難しいが、これからも継続的に考えていきたい。
(生物素材化学専修 田中暖乃)

2023.07 – 2024.03

実学研修
株式会社ダイセキ

微生物技術を環境ビジネスへ取り込むために

「サーキュラーエコノミー実現に向けた微生物利用の可能性を探る」というテーマのもと、株式会社ダイセキにて実学研修を行った。ダイセキは、産業廃棄物を処理・リサイクルし、有用資源へ活かすなど、持続可能な社会の実現に貢献する事業を展開されている環境創出企業である。本年度は「サーキュラーエコノミー×微生物×ビジネス」をキーワードとし、前述のテーマを満たす提案を行うことを目標とした。名古屋事業所での工場見学や営業・技術に携わる方とのディスカッション、事業所の設備(活性汚泥など)を用いた実験を行い、オンラインでも議論を重ねた。
本実学研修では、環境ビジネスの考え方や微生物を用いた環境浄化技術に関する理解を深めることができたと感じている。環境ビジネスについては、市場やコスト、様々な階層での課題(世界、日本、企業)など多岐に渡った検討事項を具体化していく方法を学んだ。また、微生物を用いた技術については、最終ゴールを達成するために小スケールの実験で検証すべきことを考えていくプロセスが少しずつ明確化されたと実感している。
半年間、多方面の方が関わるミーティングや実験の実施、そして提案発表会での建設的な議論を通じて学生の提案を理論・実践の両面で検証する場を提供していただき、大変学びの多い経験となった。一方で、自らの基礎知識不足、そしてサーキュラーエコノミーという概念の抽象性ゆえ、微生物を使って現状の課題のどの部分にどのようにアプローチするかついて具体化する困難さも実感した。次年度以降は、引き続き知識の習得に努めるとともに、サーキュラーエコノミーなどの地球環境問題に関わる概念に対する解像度を上げることで、広い可能性を持つ微生物をより実現可能性の高い環境浄化技術へ活かしていく方法を考えていきたい。
(理科二類 日浦萌々音)

2023.07 - 2024.03

実学研修
アクプランタ株式会社

植物の干ばつ耐性を複数の視点から考える

私は植物の干ばつ耐性を高めるための農業用植物活力剤「Skeepon」の製造および販売を行っているアクプランタ株式会社で実学研修を行いました。Skeeponは多くの植物種に対して干ばつ耐性を付与できる優れた製品ですが、Skeepon投与後にどのタイミングで植物体に再度水やりを行うべきかという再潅水のタイミングが不明瞭となっていました。再潅水のタイミングとなる指標の探索を目的として、自身が研究で取り組んでいる画像解析技術を活用した手法をアクプランタ株式会社の方々と協力して考案し、実験に取り組みました。
私は、選抜と交配を繰り返すことで優れた品種の作出を行う育種の研究を行っており、育種による作物の干ばつ耐性の上昇を目指していました。同じ干ばつ耐性であっても、「育種」と「Skeepon」という異なるアプローチがあることに興味を抱き、実学研修を始めることになりました。一から課題を探し解決策の考案および検証を行っていたため、多くの失敗を繰り返しましたが、その度に金社長や社員の方々と議論しながら課題および解決策を考案し、企業における研究のトライアンドエラーを経験することができました。最終的には、再潅水を行うべきタイミングの指標として、時系列で画像を比較した際の植物体の萎れ具合を活用できることが分かりました。自身の考案した指標は、実験レベルでは十分な有用性を示しましたが、実際の畑で使える技術へと昇華させることを考えた場合には、まだまだ大きな壁があることを痛感しました。実用性ばかりを考えすぎることも研究の幅を狭めるため良くありませんが、常に実用化を頭の片隅に置きながら研究を行うことの重要性を学ぶことができたと思います。
(生産・環境生物学専攻 櫻井建吾)

2019.04 - 2023.06

One Earthology Seminar 2023
テーマ「虫」

虫と共に生きる惑星(ほし)
2nd round

企画者として関わった2023年度One Earthology Seminar「虫」2nd roundのテーマは「ものすごい昆虫をソウゾウする ―地球を救う虫を探しに」でした。
この地球上には多種多様な昆虫が生息しており、中には驚くような生態を持つものもいます。例えば、ハキリアリというアリは葉を切って巣の中に運び、そこに菌類を植えて栽培したキノコ(菌糸)を食料にしています。ヒトにとっては、長い間、環境と共存しながら農業を営んできた先輩ともいえそうです。
このように人間にできていなかったことを可能にしてきた「すごい昆虫」が存在する事実を踏まえ、他の生物の構造や機能、行動や生態を模倣して新たな技術を開発するバイオミメティクスに着想を得て「地球を救う虫」を創造・想像するワークを行いました。
前半ではまず、この地球上に数多くある課題の解決に貢献するかもしれない架空の昆虫の特徴を想像しました。後半では、チーム間でアイデアを交換した上で、前半で想像された特徴をもとに、その昆虫の姿や生態、生息環境を推測しました。ソウゾウされた昆虫のなかには、再利用が難しい物質を分解する虫に学んでゴミ問題やマイクロプラスチックの問題にアプローチする、あるいは発光によって見るものの欲求や衝動性を抑える虫の特性を模倣して人々の行動の変容を促すなどのアイデアがみられました。実際には人間が出会ったことのない昆虫の姿をゼロからイメージするという突飛なワークではありましたが、参加された方々は知識と想像力を動員しながら楽しく取り組んでいたように思います。
ひとくくりに「虫」という枠で見てしまいがちですが、“雑多”とか“うじゃうじゃ”といった表現の陰に、私たちの心を動かすような多種多様な昆虫がいるはずです。「虫」というテーマの持つ具体性を活かし、日常の中で意識しづらいことに思いを馳せられる課題設定ができたのではないかと思います。
(生圏システム学専攻 森 健人)

2023.12.20

One Earthology Seminar 2023
テーマ「海」

100年先の海へ漕ぎだす
2nd round

One Earthology Seminar「海」2nd roundのテーマは「深海へ行こう!―未知と魅惑の世界と、私たちのつながりをさぐる」でした。
「海」1st roundでは、私たちが生活の中で海の存在をなかなか実感することがないのは「陸上で普通に生活していると海の中は見えない」からであると考え、そのような海とのつながりを想起させる体験企画を考案しました。今回はそこから深め、とりわけ日常生活でスポットが当たりづらい「深海」をテーマにしました。私自身、深海の不思議な生物や「未知」に溢れた雰囲気が好きで、興味からいろいろと調べ、ある程度知っているつもりでいました。しかし、コーディネーターの安田先生から、水深200〜300mと比較的浅い深海にこそ解明が進んでいない未知の世界が広がっていることや、きれいな宝石サンゴの群落が存在すること、そのような生態系にプラスチックごみや底引き網、密漁など人間の影響が想像以上に根深くあるという話を聞き、衝撃を受けました。私たちが普通に暮らしている間に、人間活動が今この瞬間も深刻なダメージを与えていることを強く認識しました。
セミナーでは、安全かつ安価に深海に行けるような技術が開発されたという仮定のもと、参加者が架空の旅行会社「OEGs Travel Agency」のツアープランナーに扮して、深海の未知と魅惑に触れつつ、私たちとのつながりに思いを馳せることのできるツアー企画を考えました。
グループディスカッションを通じ、参加者からは面白い企画がたくさん出てきました。深海独特の生物を見つけ、捕まえて食べるなど生物・生態系の魅力にスポットを当てた企画のほか、水圧に体を順応させた後に生身で深海へ向かい坐禅を組むという、高圧で冷たく暗い過酷な深海環境をストイックに体験する企画も出ました。また、どのグループもプラスチックごみ汚染に目を向け、人間による負の影響の大きさを意識していたのも印象的でした。
謎も多く、人間の生活と大きく切り離されているように思える深海ですが、その唯一無二の生態系や貴重な群落を未来に残していくために、まずは私たちとのつながりを実感すること、魅力を共有することが大事なのではないか、と考えさせられました。
(生産・環境生物学専攻 小坂 七海)

2023.11.29

LUC Lecture - Spotlight - 02

エネルギー生産と食料生産、そして農村の未来を考える
~営農型太陽光発電を通じて~

学生が提案する LUC Lecture Spotlight として、千葉エコ・エネルギー代表取締役の馬上丈司氏を講師としてお招きし、営農型太陽光発電を通じた食料生産とエネルギー生産の両立 に焦点を当て、それらの生産の場となる農村の未来についても考えました。
この企画の背景として、エネルギー問題は農業はじめ私たちの生活に深く関わるものである一方、あまりに根深い問題でどこから手をつければいいのかわからず、さらに工学的な分野で農学的な観点からは扱いにくい 問題であると感じていました。そこで、農業と太陽光発電を組み合わせた営農型太陽光発電を切り口に、 エネルギー問題から未来の農村と都市の関係、そしてそこで暮らす人々の生活 まで考える機会として今回のレクチャーを企画・提案しました。
前半では農業・農村における営農型太陽光発電をめぐる状況について馬上氏から講義を受け、参加者同士でグループディスカッションを行いました。営農型太陽光発電によって作物の生育にも利点があり、エネルギー生産と食料生産を両立できることに可能性を感じる意見がある一方で、発電用パネルの最終的な処理制度が整っていないことや実現可能な営農型太陽光発電の規模が大きくないことなどの課題が指摘されました。後半では、農村の役割や価値、生産の担い手の生活に焦点を当てました。参加者からは、耕作者と発電事業者が異なる場合に、売電によって得る収入が耕作による収入を上回ってしまい、耕作者が発電事業者の小作人であるという構図になってしまうことを懸念する意見が出てきました。また、ムラを作って生活してきた日本人も、人が少ない農村で暮らすことを受け入れるようになる意識の変容も必要ではないかという声も上がりました。このように人々の生活まで含めて考えることで、農業単体ではなく生活の場も含めたスマート農村の構想が必要だという意見もありました。
OEGsでは触れられることが少ないと感じていた再生可能エネルギーの分野でしたが、参加者同士で白熱したディスカッションがなされており、100年後の未来を考える上で逃れられないテーマであると感じます。
エネルギー生産については、今回テーマとした食料生産だけでなく、自然生態系との調和をはじめまだまだ学ぶことが多くある領域です。今後、現場を訪れる機会も作り今回のレクチャーに対する理解を深めていきたいとも思います。
(生産・環境生物学専攻専攻 津旨 まい)

2023.11.15

One Earthology Seminar 2023
テーマ「生命」

100年後のいのちを見つめる
2nd round

One Earthology Seminar「生命」2nd roundのテーマは「裁かれる人間 〜生態系の一員としてのヒトの存在意義は?〜」でした。
私たちヒトは、地球上で生態系の一部として存在していると同時に、自然に手を加え、利用して繁栄してきた種でもあります。1st roundでは、ヒトの目線から共存共生すべき「あらゆる生命」の範囲を考えましたが、今回は、私たちヒトが地球上の他の生物に対して有用な存在であるかや、どのようにふるまえば共存共生すべき一員と認められるかを考えました。
今回のディスカッションは、ある架空の未来、地球環境の悪化やそこに住む生物の福祉を憂慮した「宇宙惑星連盟」が、その問題を引き起こしたと考えられるヒトを被告として宇宙裁判で裁くという設定で行いました。参加者は被告「ヒト」の弁護団の一員として、極刑(種の断絶)を免れるための弁護方針を立てるため、まずはヒトの生態や特徴を分析し、ヒトの無害性、有用性をどのように主張できるのか、各グループで議論しました。
ヒトの特徴として、道具を使えること、コミュニケーション能力や論理的に理解する能力を持つことなどが挙げられました。そして、これらをもとに、自らの非を認め反省することができるヒトは害をもたらさない存在になれる(無害性)ことや、将来に向けて計画を立てて種全体に共有し、教育により次世代に継承することで環境や他の生命の福祉の改善を図ることができる(有用性)と主張できるのではないかという意見が挙げられました。
今回はヒトという種を弁護する設定で議論を行ったこともあり、私たちヒトという種が持つ特性を客観的に分析することができました。私は、他の生物を飼育したり栽培したりするのはヒトに固有の特性だと思っていたのですが、キノコを育てるアリ(ハキリアリ)が存在するということを同じグループの方から教えていただき、衝撃を受けました。また、現在の環境に対してヒトが負荷を与えているのは事実であり、完全に無害であると主張するのは難しく、そのうえ有用性として主張できるような性質を持っていながら環境破壊という悪い方向に使ってきたという現実も再認識させられました。宇宙裁判で種の断絶を言い渡されることがなくとも、私たち人間は自らを客観視し、現状を変える必要があると強く感じました。
(理科二類 西本 碧)

2023.10.25

One Earthology Seminar 2023
テーマ「虫」

虫と共に生きる惑星(ほし)
1st round

2023年度One Earthology Seminar「虫」第1回のテーマは「⾍嫌いはなぜ? まっさらな⽬で⾍を⾒つめる」でした。
「地球は昆⾍の惑星(ほし)である」といわれるほど昆虫は地球上に多く存在し、生態系において重要な役割を担う一方で、その数は急激に減少している現実があります。しかし、昆虫の減少がもたらす生態系崩壊の可能性が叫ばれる中においても、ジャイアントパンダのような大型哺乳類の保護と比べて、昆虫保護への関心は低いままです。
今回は、その背景にあるといわれる「⾍嫌い」に目を向け、現代⼈の「虫嫌い」を改善するための方策を4つのグループがそれぞれに企画し、提案しました。
はじめに、アイスブレイクとして、グループ内でそれぞれの「推しの生物」を共有しました。私のグループには、子ども時代に何らかの形で虫に触れあっており、昆虫に格別の嫌悪感は持たない方々が集まっていました。
その後、4つのグループがそれぞれ、「建物・住宅」「ファッション」「芸術」「エンターテインメント」という異なる分野から、昆虫への関心を高め、親近感や愛着を育めるような企画を考えました。議論の末、芸術の分野から「チーム・ラボ虫(バイオドームとARを融合し、昆虫を探索する施設)」、建物・住宅の分野から「グリーン・ドミトリー(菜園や緑地と一体となり、養蜂をしながら居住する寮)」、ファッションの分野から「MUSI COLLECTION(虫の生態や形態からデザインを着想したファッションショー)」、エンターテインメントの分野から「いんせくとっ!(昆虫を擬人化したスマホゲーム)」が各グループから提案されました。
それぞれの提案からは、虫への「汚い」「危険」「有害」といった先入観を、「かっこいい」「きれい」「大切」といったイメージに変えていくことで、昆虫への愛着を育もうという意図が感じられました。一方で、昆虫が苦手な参加者からは、これらの提案に「自分から積極的に参加したいとは思い難い」といった意見も発せられました。今回の参加者には昆虫嫌いが少なかったこともあり、昆虫嫌いの人の感性に寄り添う提案をする難しさが実感されました。また、個人の好みに関係する問題だけに、世間一般の昆虫に対する印象を急激に好転させることは非現実的であるようにも感じられました。
今回のセミナーを通して、私は、まず、虫嫌いではない層へいかに働きかけていくかが虫嫌いへのアプローチのカギになるという考えに至りました。昆虫に無関心で知識がないことによる、不要な駆除や無配慮な開発が昆虫を追い詰めてきた事実があります。「無関心からの脱却」、これが最優先課題なのかもしれません。
(緑地環境学専修 成川 央庸)

2023.09.27

One Earthology Seminar 2023
テーマ「海」

100年先の海へ漕ぎだす
1st round

2023年度One Earthology Seminar第2回のテーマは「Under the Sea ~見えないものとのつながりに意識をそそぐ」。
私たちと海とのつながりを見つめ直し、「⼈に伝えたい海の今」と「未来に残したい海とのつながり」に意識を向けるための体験を企画することを目指しました。
冒頭で、それぞれの海の思い出を共有しグループ内での親睦を深めました。海は嫌いではないけれど積極的に泳がない・眺めるだけでよい、という人が多く、海は日本人の身近なところにあるようで、私たちの海との距離感は一般的には遠いものになっているような気がしました。ただ、美しい風景として静かに海を眺めたり、海産物を味わったりと海を楽しむ方法は様々に存在することが共通の認識として浮かび上がりました。
その後、4つのグループがそれぞれ「子ども連れの家族」「都市部で働く30-50代の現役世代」「修学旅行に参加する高校生」「日本語が分からない訪日観光客」という異なる対象に、海とのつながりを意識してもらえるような企画を考えました。議論の末、「移動式海上牧場(海の上につくられたふれあい型の水族館)」「恐怖の大人のキッザニア~海編~(海面上昇に伴う危機を体感できるアトラクション)」「ワクワク無人島体験~君が世界を変える!~(無人島での2泊3日サバイバル修学旅行)」「恐ろしいけれども離れられない海(津波のVR体験と寿司の実食)」という4つの企画が披露されました。
印象的だったのは、現代人への「戒め」が大切という感覚に共感が集まったことです。4つのグループ中の2つが自然の脅威としての海に脚光を当てたことから、私たち自身の意識が変わらなければ海は人間の脅威として立ちはだかるという危機感、そしてその危機感が広く一般には認識されていないことへの焦燥感とも言うべきものを抱いている人が参加者に多いことが分かりました。
ただし、海の怖い側面だけが強調されてしまうと、却って心理的な距離感が生じる可能性があります。海の美しさや楽しさを感じられ、海に親しみが持てるような働きかけを同時に行っていくことが大切だとの意見も出されました。
私たちと「海」は今、細い糸で繋がっている状況なのかもしれません。その糸を太く撚り直すか、切れるがままに放っておくのかを問われる時期に来ているのではないでしょうか。海に囲まれた日本に住む私たちだからこそ、海との繋がりを再考し未来へと残していきたい姿を模索していくことが求められていると改めて実感しました。
(農業・資源経済学専攻 川瀬 翔子)

2023.08.23

One Earthology Seminar 2023
テーマ「生命」

100年後のいのちを見つめる
1st round

1回目のテーマは「あらゆる生命との共存共生-そこにいるのは、だれ?」でした。環境倫理の観点から架空の生態系保護政策の是非を考え、関連課題を検討しながら「生命との共存共生」に対する立場を明らかにすることが目標です。OEGs 受講生のみならず、企業や省庁など学外の方にもご参加いただきました。
提示された政策は、生態系を回復させるためにAIに基づいて人工的に作出した、生態学上理想的な新生物を環境中に放出する、というものです。この政策に対してとる行動や共存共生すべき生物について議論を行いました。この中で、どのような生物の個体数がどう変化した時、ヒトが生態系に影響を与えたと定義されるのか、等の新たな検討事項が生まれました。私たちのグループは、人為的に作出された生物はヒトの管理下でのみ存在することが認められる、また、新生物を環境中へ放出する政策に対しては評価体制を確立するべき、という結論に達しました。
議論を行うまでは、一度に複数の懸念事項を考えてしまい、かなり漠然とした意見に留まっていましたが、当日は他の方から問題提起を投げかけられ、意見の違いを分析・言語化していきました。そのなかで自分は、遺伝子組換え生物などは科学技術の発展にも寄与しており、その存在自体は否定しないものの自然界から切り離されるべきで、『共存共生すべき対象』には当たらない、という立場であることが明確化されました。
また、生態系保護・保全を掲げても人間中心的な考え方にならざるを得ないことも痛感しました。あらゆる生命の尊重が理想像とされる一方、どこかで割り切らない限り、実行に移すことができないというジレンマを抱えています。
生態系を巡る現状を鑑みると今後、様々な生態系施策の提言が考えられます。生存権の認識対象を生物・生態系全体へ拡張することの是非を問う環境倫理を切り口に、この絶対解の存在しない問題に取り組んでいく必要性を感じました。
(理科二類 日浦 萌々音)

2023.07.26

Workshop

"めぐる"ってなんだ?
~食べる、つかう、それから-生活からみつめる循環型社会~

本イベントのテーマは「"めぐる"ってなんだ?」です。近年、循環型社会やサーキュラー・エコノミーという言葉が声高に叫ばれるようになりました。しかし、そもそも資源やモノが”循環する“、”めぐる”とはどういうことなのか、という本質的な問いについて考える機会はそれほど多くありません。そこで、私たちの身の回りに意識を向けながら、”めぐる”ということについて考え直してみました。
イベントはエコッツェリア協会協力のもと大手町の3×3Lab Futureという交流・活動拠点で行われ、一般参加者とOEGs受講生が集まりました。
まず初めに、本研究科の高橋伸一郎教授からOEGsの紹介と教授の研究内容からみた生命現象における循環についてお話ししていただきました。続いて、カムフル株式会社代表の関根久仁子氏に、循環型社会を達成するために実践されてきた企業などでの取り組みについて紹介していただきました。生命現象から現実社会まで、様々なスケールで循環というものが存在していることや、今停滞している循環をいかにしてめぐらせてゆくかという話をお聞きして、「めぐる」という言葉をより具体的なイメージとして捉えられるようになりました。
イベントの後半では、「身の回りで循環していないもの・循環すべきだと思うもの」について考える、少人数のワークショップを行いました。婦人用鞄・祝い花・空き家など、多種多様なアイデアが出てきました。特に、感染対策に利用されているアクリル板の処分に困っているという話をとても身近に感じました。
今回のイベントのなかで、「循環させるための”人同士の繋がり”が不足している」という意見が印象に残っています。自分にとって不要なものを必要としている人は存在してはいるが、その人たち同士で繋がることができないという課題は確かに重大そうです。普段、講義を通して技術的・科学的に物事を循環させる方法を学んでいますが、コミュニティの形成という社会的な観点も同様に重要なことであると感じました。
(生命化学・工学専修 中川俊明)

2023.05.10

実学研修
公益社団法人 MORIUMIUS

自然の中の暮らしから100年後の未来へ

公益社団法人 MORIUMIUSの皆様にご協力いただき、「持続可能な暮らしから学び未来をつくる」と題した実学研修を実施いたしました。具体的な活動としては、宮城県石巻市雄勝町の子ども向け複合体験施設「モリウミアス」での現地活動に加え、MORIUMIUSが実施しているオンラインプログラムのサポートや子どもたちへのインタビュー等を行い、農学的な面にとどまらない様々な学びを得ることができました。
地元で穫れた食物を調理し、余った食物は家畜の餌となって土に還り、やがて畑や海の栄養となる。施設裏の山からは薪を調達して暖を取り、その灰もやがて森を育てていく。そんな、自然の循環の中に人間が共存している、持続可能な暮らしを体験する事ができました。そして、その暮らしは、子どもたちにだけでなく大人になった私たちにも、森と海と私たち人間の関係を問いかける、とても刺激的なものでした。日頃の生活ではなかなか意識を向けることのない、自らの「暮らし」について見つめ直す機会を与えてくれたように思います。
地球医を目指す身として、100年後も続く持続可能な未来のための暮らしの在り方を考え続けなければならない、と強く感じました。今回得た学びや自分の専門などを複合的に活かして、その未来のために貢献していきたいと思います。
(国際開発農学専修 志賀智寛)

2022.07 - 2023.03

実学研修
東洋水産株式会社

食品残渣の高付加価値化を目指して

今回は食品残渣の高付加価値化を目指して、東洋水産株式会社関東工場の皆様とともに実学研修を行いました。食品工場では様々な食品残渣の出る要因がありますが、その再利用方法を工夫することで消費者教育や地域連携のような副次的な価値を持たせることができないか考えました。
実学研修メンバーで関東工場を訪問して製造工程を確認し、課題を「割れたかき揚げの再利用」「排水処理汚泥の高付加価値化」の2点に絞り解決策を模索しました。
割れたかき揚げの再利用は、かき揚げを用いたレシピの作成と、関東工場食堂での消費を考えました。前者は消費者教育に、後者は廃棄物輸送による二酸化炭素排出量削減につながる可能性があります。
排水処理汚泥は工場で麺を茹でた排水由来の汚泥です。この汚泥の活用方法としてミミズの餌とする可能性と、メタン発酵による利用を考えました。関東工場の所在する館林市は利根川流域で川魚料理が有名であり、魚の餌としてミミズを養殖し地域に卸すことで地域貢献も期待できます。メタン発酵は工場見学者などに「即席めんの製造過程で生じる有機物からメタン燃料を作り、そのエネルギーで即席めんを茹でて提供する」といったデモンストレーションに用いることで、ただの燃料以上の意味を生むと考えます。
以上の模索を通じ、残渣の再利用に金額以上の価値を創造することが今後につながる重要な視点だと実感しました。
(生命化学・工学専修 山田健登)

2022.07 - 2023.03

実学研修
株式会社chicabi

100年後の酪農を考える

私は、「100年後の酪農を考える」というテーマのもと、株式会社chicabiで実学研修を行いました。国内の生乳需要が低下している中で酪農が今後も生き残っていくためには、対外戦略を考える必要があると感じました。そこで、「行政の立場から酪農の海外輸出・進出を考える」ことを個人テーマとしました。
10月にchicabiが運営する千葉ウシノヒロバにてchicabi代表の川上さんからウシノヒロバの役割についてのレクチャーを受けた後、オンラインで農林水産省畜産局牛乳乳製品課へのインタビューを行いました。
インタビューを通じて浮かび上がったのは、日本の牛乳のブランド化と、集乳構造のジレンマです。日本では酪農組合により集乳後一か所にまとめて加工されており、酪農家ごとの差異を出すことができなくなっています。よって輸出を考える際には、生産体系の大幅な変更を考える必要があります。しかし、欧米酪農諸国に比べ、土地面積の制約や、気候条件の制約がある中で、どのようにブランディングすればどのくらいの利益が見込めるのかという保証が得られないと、リスクをとって生産体系の変革を起こすことはできません。
この実学研修を通じて、今までは全く気付いていなかった問題に目が向くようになりました。今後もこの実習で得た広い視点を活かして活動していきたいと思います。
(国際開発農学専修 福永莉奈)

2022.08 - 2023.02

実学研修
住友林業株式会社

日本の森林の再造林促進策を考える

日本の森林の再造林放棄によって、災害リスクの増大が懸念されていることを知り、その課題を解決するために、住友林業株式会社で実学研修をさせていただいた。私は林業が専門ではなかったため、林業の仕組みを理解するところから始めた。木材価格の低迷によって収入が造林コストを下回ること、高齢化および後継者不足、里山林の衰退など、再造林を妨げる要因を学び、その解決策を考えた。また、座学だけではなく、住友林業の社有林や筑波研究所を訪問させていただき、現場を見て考える貴重な機会をいただいた。現場ではレクチャーや社員の方々とのディスカッションを行い、自分なりの解決策を組み立てていき、最終的には、2つの再造林促進策を提案した。1つ目は森林所有者の再造林意欲を高めるために、林間作物を生産し木材生産以外で利益を得る策。2つ目は環境問題や自然体験に関心のある観光客に造林体験を提供する策を提案した。提案に対していただいたフィードバックを通じて、林業の敷居を下げることで、再造林や林業における課題を解決できるのではないかと思うようになった。これからは林業の敷居を下げるための活動に取り組み、森林の保全に貢献したい。
(緑地環境学専修 松岡怜)

2022.07 - 2023.03

実学研修
SOMPO環境財団CSOラーニング/WWFジャパン

実体験を通じて環境保全への視点転換

私は公益財団法人SOMPO環境財団のCSOラーニング制度を通じて、派遣先であるWWFジャパンにて8ヵ月のインターンをさせていただきました。WWFは100か国以上で活動している自然環境保護団体であり、野生動物の保全や地球温暖化の抑制などに力を入れています。今回のインターンではWWFの活動内容や運営の仕組みを理解した上で、新しいユース向けの環境リーダー育成プログラムを一つ提案することが目的でした。私は気候変動とサーキュラーエコノミーの取り組みについてWWFジャパンのオフィサーにヒアリングした後に、気候変動イニシアティブ(JCI)という組織に加盟している企業の、脱炭素社会に向けた取り組み促進する提案をしました。また、2020年に起きた日本の貨物船によるモーリシャスでの重油流出事故で、現在でも海洋汚染の回復活動を行っている現地の環境保護団体Eco Sudのメンバーにオンラインで聞き取り調査をしました。外部ユース団体調査、オフィサーヒアリングなどいろんな実体験をしている中で、私は環境保全に対する視点が大きく転換し、具体的なアプローチを知り、そして実際にプログラムを企画するとができました。
(応用生物学専修 劉美辰)

2022.06 - 2023.01

実学研修
株式会社ダイセキ

環境にやさしい廃棄物処理とは

「サーキュラーエコノミーによるカーボンニュートラル実現に向けて〜環境保全と経済成⻑の両⽴を考える〜」というテーマのもと、株式会社ダイセキの皆様と半年にわたって実学研修を行いました。サーキュラーエコノミーとは、資源・エネルギーの消費を減らし、自然を守るだけでなく、廃棄物や汚染をなくして製品や資源を循環させることを理想とする経済システムのことです。研修はオンラインでの活動が主でしたが、ダイセキ名古屋事業所で産業廃棄物処理の現場を見学させていただきました。工場の見学だけでなく、実験室で実際の処理方法を体験させていただき、とても貴重な体験ができました。
今回の研修では、廃棄物をなくすこと・資源を循環させることとダイセキの事業である産業廃棄物処理に注目し、環境に優しくかつ利益を生むことのできる新しい産業廃棄物の処理ビジネスについて考えました。環境負荷やコストなどのバランスが取れた提案を学生だけで考えるのはなかなか難しかったですが、ダイセキ社員の方々がたくさんの助言をくださり最終的に微生物を利用する廃棄物処理事業案を作成することができました。事業案は山本社長をはじめとしたダイセキ役員の方々からも好評で、提案後の意見交換の場では、もし事業案を実現するとしたらどの部分を詰めていくべきかなど活発に議論を交わすことができました。
研修を通じて、サーキュラーエコノミーについての理解だけでなく新規ビジネスの創出についても学ぶことができ、非常に有意義な経験になりました。
(生物素材化学専修 名嘉陽奈)

2022.07 - 2023.01

実学研修
オイシックス・ラ・大地株式会社

「フードロス」問題をビジネスとマーケティングの力で解決し、食と地球を豊かなものにするには?

近年、規格外の食材や小売業での売れ残りの廃棄によるフードロスの問題が注目されています。オイシックス・ラ・大地社は、このようなフードロス問題の改善をテーマの一つとして掲げながら、マーケティングに根差した食品宅配サービスを提供している企業です。
今回の4回にわたる実学研修では、関係者にお話を伺い、フードロス問題に取り組むオイシックス・ラ・大地の事業について多様な視点から知見を得ることができました。
例えば、生産者からの食材が集められる流通センターの方と、農家の方に、それぞれお話を伺う機会がありました。流通センターでかなり熟している状態の食材はお客様のもとに届く際には傷んでしまうため配達することができないそうですが、一方で農家の方にとってはそのような状況が生じてしまうことに納得できないこともあるそうで、流通のなかでさまざまな立場の方が関わるフードロス問題において、領域間での柔軟な調整や、コミュニケーションの重要性とその難しさを実感しました。
また、研修を経て、企業が事業を通じて課題解決を図る際の難しさの一つは環境に配慮しながら売上を維持しなければいけないことであり、顧客のニーズを把握するマーケティングの重要性を学びました。さらに、農林水産物を扱う場合は、自然状況により変動する供給量と一定した需要量との間で調節をする企業にとって、大きな負担となっていることが課題であると感じました。
(文科一類 山本英奈)

2022.07 - 2022.12

第13回LUC Lecture
【オンライン開催】

アート×サイエンスで語る、バイオ素材の可能性
-宇宙でつくって宇宙でこわす 持続可能なものづくり-

第13回LUC Lectureでは、科学美術者の田羅義史氏、北海道大学大学院工学研究科の田島健次准教授、本研究科の五十嵐圭日子教授と砂川直輝特任講師に、持続可能なものづくりにおけるセルロースの可能性 についてお話しいただきました。
セルロースは地球上で最も豊富に存在する有機物であり、再生可能なバイオ素材として注目されています。特に、田島先生が研究している、微生物が合成するバクテリアセルロースには、高い機械的強度や成形性、生分解性、生体適合性など、優れた機能が多く存在し、幅広い応用が可能です。このことは、バイオ素材の可能性を信じる上で十分な根拠になると言えるでしょう。これまで金属やプラスチックなどが主流であった製品や材料が、バイオ素材に代替可能な状態になると望ましいだろうと思いました。
また、五十嵐先生らが宇宙実験で行っているセルロース合成システムの実験キットが参加者に配られ、実際にセルロース合成を体験することができました。
講演では、他にも変わった視点として、バイオ素材でアート作品を制作している立場から田羅さんが、バクテリアセルロースでできた衣服などの作品を紹介しました。実用性だけでなく、ユニークさや美しさといった素材の特性に注目することで、新しい面白い作品が生まれうるという、アートの無限の可能性にも目を向けていきたいと感じました。
(応用生物学専修 山田 絢太郎)

2023.03.22

第12回LUC Lecture
【オンライン開催】

災害・戦災をテーマとした多元的デジタルアーカイブズ・シリーズ

今回のLUC Lectureでは本学大学院情報学環・学際情報学府教授の渡邉英徳先生を講師に迎え、デジタルアーカイブを利用した災害や戦災の記憶の継承についてご講演いただいきました。渡邉教授らが手がけてきたデジタルアーカイブは、各地に散らばっていた多数のデータが一つのデジタル地図上に集約されています。すると個別にデータを見るだけでは知り得なかった「ストーリー」に触れることができると、渡邉教授は言います。
例えば広島の原爆被害に関する資料をまとめた「ヒロシマ・アーカイブ」において、現在女子中学校・高校が存在する地点には当時女学生だった方の証言が複数マッピングされており、女学校にいた女学生らが被爆したストーリーが浮かびあがります。さらに、被曝直後と現在の航空写真を重ねたり、東京に被爆者の現在の所在地が表示されたりすることで、私たちのいる時空間と「地続き」であると感じられると言います。
OEGs受講生の間では、環境問題の自分事としての感じにくさがしばしば課題に上がってきました。現実世界で何らかの事柄を自分事に感じる場面は、実際に体験する、リアルな経験談を身近な人から聞くなどと、時間的にも空間的にも範囲が非常に限られます。しかし今回のお話を聞いて、蓄積されたデジタルデータを上手に組み合わせて提示すれば、その範囲が格段に拡大することに気づきました。渡邉教授らのデジタルアーカイブは、表現された空間に生きる人々の顔や営みに触れ、自分の生活や経験と重ね合わせられる点が共通していました。これが自分事の範囲を広げる鍵なのかもしれません。私は今回の講演で学んだことを手掛かりに、自分事にしてもらえる環境問題の伝え方を模索したいと思います。
(森林環境資源科学専修 内藤 英理香)

2023.02.21

One Earthology Seminar 2022
テーマ「海」

100年先の海へ漕ぎだす
2nd round

12月のOne Earthology Seminarは「海を次世代に伝える」をテーマに開催されました。 今回のグループワークは、次世代に海への興味関心を強く持ってもらえるような物語を作り、小学校低学年を対象とした教材にするという設定でした。「シン・ウラシマタロウ」と題し、日本の昔話「浦島太郎」をベースとした物語を作る、というところまでは決められていますが、内容や細かい設定はグループに委ねられています。海からもたらされるさまざまな恩恵や脅威、また海を取り巻く環境問題などを次世代にどう伝えたいか。詳しく説明すれば難しい話題を、わかりやすく物語に盛り込んで伝え、考えてもらわなければならないという制約の中、4グループがそれぞれ異なった興味深い物語を展開しました。
「海でポイ捨てしたウラシマタロウが竜宮城につれて行かれ、海の大切さを説かれて帰ってくる」といった内容のグループもあれば、「ウラシマタロウが亀型タイムマシンに乗って海の過去・未来を見せられ、現在すべきことを考える」といったユニークなものもありました。我々のグループでは海のもたらす「食」という機能に着目し、ウラシマタロウが竜宮城で海の命の循環を目の当たりにしたのち、自分でもそれをありがたくいただくという描写を入れました。わかりやすく、それでいて説教臭くない程度にメッセージ性を込める加減が難しかったですが、「美味しいものを食べること」という子供たちにも親しみやすい題材にすることで、「その食べ物がどこからきているのか?」「そこには命のやりとりがあるのだ」という投げかけをうまく織り込むことができたのではないかと思います。
大学で講義を聞いたり研究をしたりしていて日々感じることの一つに、「科学的な話題のコミュニケーションの難しさ」があります。科学的な思考を広く社会に広げていくためには、その分野の外の人にもわかりやすく伝わる伝え方を模索しなければなりません。言葉をわかりやすく噛み砕くことも重要かもしれませんし、自分ごととして考えられるような身近な話題に落とし込むことも必要でしょう。そのような意味で、今回のセミナーは「難しい概念を他人にわかりやすく伝え、考えてもらう」ことのとても良い練習になったと感じました。今後もさまざまな場面で「伝える」工夫をしなければならない時には、今回のセミナーをヒントにしたいと思っています。
(農学国際専攻 渡辺 陽祐)

2022.12.21

第11回 LUC Lecture

バイオテクノロジーを活用した社会づくり
~MATSURIを例として

第11回LUC Lectureでは、ちとせグループFounder&CEOの藤田朋宏氏に、環境持続型産業創出のビジョンと巻き込み力の極意についてお話しいただきました。まずビジョンについて、藤田さんの考えでは、バイオテクノロジーの社会実装には「科学」「技術」「事業」「社会」の4つの段階があり、「科学」から「社会」へ向かう流れと、その逆に「社会」から「科学」に向かう流れがあるといいます。現代では、生物を「事業」や「社会」へ活用するには、まず「科学」を追究し、生命現象を完全に理解しなければならないという考え方が主流です。一方で、生命現象の全てを理解し人間がコントロールすることは難しいという事実を受け入れた上で、「社会」の課題を解決するための「科学」や「技術」を探すという方向性もあると藤田さんは言います。
藤田さんのお話を聞いて、私は「誰の何を解決したいのか」を明確にする必要性を改めて感じました。「この技術を何かに利用したい」という思いから出発してしまうと、社会実装に向かう過程でさまざまな課題に対処していくうちに、「果たして何がしたかったのだろうか」と目的を見失ってしまうことになります。また、人々を巻き込むときにも、社会の未来像を据えるということは有効です。世間の大多数の人にとっては、解決策の根拠となる「科学」や「技術」を理解することは難しいからです。藤田さんも、社会の何の役に立つのかを人々に伝える際に、課題解決のモチベーションやビジョンを共有することが重要であると指摘しています。多くの企業や人々は技術や利益にお金を払っているのではなく、理念やミッションに投資しています。結局のところ社会におけるプレーヤーである人の共感を得られなければ社会に受け入れられないのです。
今回のLUC Lectureでは、OEGsの理念である「社会に対してビジョンを提案する」と「巻き込み力を養う」に関して、大きな気づきを得ることができました。そしてそのポイントは、問題となっている「モノ・コト」ではなく、問題を抱えている「人」に着目することであると学びました。今後、さまざまな立場の人との対話を大切にしながら活動に取り組んでいきたいと思います。
(水圏生物科学専攻 桑田 向陽)

2022.12.14

One Earthology Seminar 2022
テーマ「土」

100年後の大地を想う
2nd round

11月のOne Earthology Seminarは「有限な大地に生きる、人と自然とのかかわりとは」をテーマに行いました。人を含めた全ての生物種が福祉を保ちつつ、有限な大地で折り合いをつけて生息していくことを目標として、私たち地球人の生活のあり方について議論を行いました。人類活動の環境影響について議論を行うと、人口の縮小や、人類の発展を諦める、といった方向に落ち着く傾向があるため、今回は人口増加を前向きに捉えた上での生態系と地球人の生活のあり方について焦点を当てました。また、地球を外から見たときにどのように評価されるのか、という視点で議論を行うため、“遺すに値する惑星”として地球の「宇宙惑星遺産」への登録を目指すという架空の設定を用いました。
参加者は4つのグループに分かれ、そのうち3つのグループは、登録を目指す地球人の立場でそれぞれ[自然との隔離]、[自然との融合]、[自然の制御]の方針を軸に、人の生活と自然との関わり方の検討を行いました。もう1つのグループは、登録審査を行う地球人以外の宇宙連盟メンバーという立場となり、地球に対する「宇宙惑星遺産」への認証基準を議論しました。自然を完全に制御したり、宇宙人の立場で考えたりなど、一部のグループには難しい設定を強いることとなりましたが、それぞれが自分の立場になりきり、グループを跨いで活発な議論が行われました。
最後に、自分自身は地球人としてどのような暮らし方を選びたいと考えるか、3つの方針から選ぶ投票を行いました。最も票を集めたのは、都市の既存のアスファルトを剥がす等の自然化を行うことで自然と都市の融合を図る生活を提案した、[自然との融合]グループでした。現在の生活からの移行のしやすさや、地球人の生活の中に他の生物との共存を組み込む姿勢が評価されたものの、人口増加には対応しきれないという懸念点も挙げられ、自然との関わり方の是非について一概には判断できないという点を再確認した議論となりました。
(緑地環境学専修 橋元 菜摘)

2022.11.16

One Earthology Seminar 2022
テーマ「食」

100年後の「いただきます」を考える
2nd round

今回のテーマは「新しい食への向き合い方 ―食事に求めるものは何か?」です。世界的に見れば、紛争地域や発展途上国で食糧危機が深刻化している昨今、現在の食生活をいつまで続けられるかが懸念され、様々な食の未来が模索されています。もし、食生活を大きく転換しなければならない未来が来たら、新たな食に対し人々はどう反応するでしょうか。
この課題に対し、参加者は仮想の食品会社「OEGs食品」の社員となった設定で、食品ロスが出ないように生産されたキューブ食(エネルギーや栄養バランスのとれた食料ブロック)を、特殊なVRゴーグルによって理想の食べ物の見た目や匂い、食感を再現して食べるという新奇な食事のあり方を普及させる宣伝方法についてグループ内で議論を交わしました。新たな食への懸念として、職人技のような食文化の継承や、食によるつながり、料理の楽しみといった食の側面が失われるのではないか、といった声が挙げられた一方、社会変容は否めないことであり、食糧危機の対策としてキューブ食の開発は未来の食への技術革新を促す第一歩として有意義な試みであると賛成の声も上がりました。私自身は一人暮らしをしており、毎日「何食べようかな」と迷っていることが多いので、VRのパーソナルシェフが決めてくれるとありがたいと思い、食の利便性を優先的に考えました。
(応用生物学専修 劉 美辰)

2022.10.19

Workshop
リサーチデザインワークショップ (講師: ブレインラボ代表 南 賢士郎 氏)

「研究を自分で進められる!リサーチデザインの基礎」

「リサーチデザインの基礎」ワークショップでは、まず研究(基礎研究)と開発(応用研究)の違いについてレクチャーをいただき、その後グループワークでお互いの研究について構造化を行いました。農学は特に両者の分野が融合していることが多い領域でもあります。個人的には所属内で研究が完結してしまいがちでしたが、他分野の研究に目を向ける良いきっかけになりました。具体的な学びとしては、基礎研究に分類される論文では「価値のある情報(新しい発見)は何か」を抽出することが要旨の理解に役立つことです。私は社会実装を主眼に置くことが多く、サーベイではモデルの構造理解に重点を置くことが多いため、両者の違いが鮮明になりました。他にも研究の分類方法に関するさまざまなフレームワークをご教示いただき、研究という活動そのものの言語化、ならびに他分野の研究者の方々との対話の一助となるイベントでした。
(森林科学専攻 金子 竣亮)

2022.09.22-29

One Earthology Seminar 2022
テーマ「海」

100年先の海へ漕ぎだす
1st round

9月のOne Earthology Seminarは「海とともに暮らす」というテーマで開催しました。
海には、海洋汚染や、沿岸の開発による環境破壊など多くの問題が存在します。このような問題の解決のためには、異なる立場の人同士が話し合い、それぞれ当事者意識を持って行動することが必要です。そのため、今回のセミナーは「ある課題に対し、自らと異なる立場を考慮しながら解決に向けた議論をすること」を目的としました。詳細設定として、同じ海に接しながらも海洋施策方針の異なる四つの仮想国家を想定し、共有する海に「海中エレベーター」建設計画が立ち上がった中、参加者が各国の代表者として議論するというプログラムを企画しました。「海中エレベーター」建設によって各国間の交流や発展が期待される一方で、海洋環境が変化する恐れもあります。「水産資源に頼る国」、「海の景観や文化的価値を重視する国」、「国民の安全性と利便性を追求したい国」、そして「科学技術力はあるが人口現象に悩む海中国家」の4チームに分け、それぞれの立場から交渉を行いました。
交渉の結果、賛成派からは、食料の確保や技術の交流を促進するために、海中エレベーターによる交流を早いうちから進めるべきといった意見が挙げられました。一方、反対派からは、エレベーターの効果や環境に与える影響(環境被害)への疑問から、新エネルギーの潜水艦などの他の解決方法も視野に、共有する海とどのように向き合うかを、関係者間で議論し尽くすべきという意見が挙げられました。 このように、国単位で相手の立場を考慮しながら交渉できた一方で、それぞれの国の住民がどのような生活になるか、今後どのような被害を受ける可能性があるかといったミクロな視点はあまり見られませんでした。今後は、国というマクロな視点を考えると同時に、住民などのミクロな視点も重視しながら、問題に対して当事者意識を持つことができるようなプログラムを企画したいです。
(農業・資源経済学専攻 髙田 瑛仁)

2022.09.21

One Earthology Seminar 2022
テーマ「土」

100年後の大地を想う
1st round

8月のOne Earthology Seminarは「食糧生産と土壌〜持続可能な農業を考える〜」をテーマに、土に根ざした食糧生産を軸とした持続可能な生活の実現について考えました。
参加者に与えられたミッションは、土壌の疲弊により十分な食糧生産を行うことが困難になった地球において、どんな大地でも作物の生産に適した土壌に変えることのできる《資材 X》が突然もたらされたという架空の設定のもと、持続可能な生産と生活を立て直すべく、《資材 X》の利用計画を立てることでした。《資材 X》は量が限られていて一時的な効果にとどまるという制約があるなかで、地球上のどのような土地でいかに生産活動を行い、人々の生活を営んでいくのか、各グループで話し合いました。考える要素の多い設定でしたが、このような設定を通し、持続可能な食糧生産を考える上では、生産量という一つの面だけでなく、環境や生態系へ与える影響や人々との生活の関わりなど、農業活動の様々な側面に目を向けたいと考えています。
発表では、自給自足の複数のコミュニティの連邦体制や、《資材 X》を分割して研究活動や緑地化等にも使用する計画など、グループごとに特色ある提案となりました。ディスカッションでは、果たして本当に持続可能なのか、土壌の疲弊と環境の荒廃を繰り返すことになってはいないか、といった疑問が投げかけられ、持続可能な食糧生産活動を考える上で環境への影響や人々の生活まで意識することの難しさを感じました。
(生圏システム学専攻 橋元 菜摘)

2022.08.24

One Earthology Seminar 2022
テーマ「食」

100年後の「いただきます」を考える
1st round

今回のテーマは「未来を生き抜く食のあり方 ―加工食品は生きるチカラとなりうるか―」です。加工食品は時代の変化やニーズに合わせて生み出され、我々の食生活を支えてきました。本セミナーでは、そんな加工食品は100年後の地球にどのように貢献できるのか、について考えました。
テーマについて考えるための設定として、参加者は2122年に創業100周年を迎える加工食品メーカー「OEGs食品」の社員になりきり、「100年後の地球へ:ローカルコモンズでつなぐ食の未来」をコンセプトとする新商品の提案を考えました。各グループは「環境」や「経済格差」といった条件が異なる国における新商品を想定し、参加者自身が予想した「100年後の未来の社会像」を条件に加えることで、100年後の食のあり方を現実的に考える機会となりました。
ディスカッションを経て、経済格差が大きい国を想定したグループでは貧困層向けに「VRを使って様々な料理を再現する技術」、環境が悪化し培養肉や代替肉しか食べられない国を想定したグループでは「大豆を原料に3Dプリンターで作った黒毛和牛」など、各チームの個性が光る新商品が提案されました。多くのグループが現代の食を守る(再現する)ような加工食品を提案しており、現代の食生活の豊かさを再確認しました。
(農業・資源経済学専攻 宇都宮 涼)

2022.07.13

第8回 LUC Lecture
【オンライン開催】

宇宙のSDGs と 地球のSDGs
―宇宙でつくって宇宙でこわす 持続可能なものづくり―

近年広く話題となっているSDGsは地球だけではなく、宇宙での実現も考えられています。今回のLUC Lectureでは有人宇宙システム株式会社/JAMSS 宇宙飛行士訓練インストラクタの張替真理亜氏と本研究科の五十嵐圭日子教授にご講演をいただきました。宇宙では様々な実験が行われており、ものづくりの分野のひとつでは二酸化炭素と水を材料に、太陽光エネルギーを用いてセルロースを生み出せます。これは宇宙で形を持った構造物を持続的に作ることができるということになります。今までは宇宙を漠然とした広い空間としか捉えていませんでしたが、ISSでの生活といった等身大のお話を伺うことで宇宙が身近なものとなり、日常生活から「宇宙ではどうなるだろう」という視点をもって地球を俯瞰したり宇宙を自分事としてとらえられるようになりました。
地球は「宇宙船地球号」と表現される一方でISSは「小さな地球」と言われることもあります。ISSでは水は貴重な資源のため、人間が排出するものも含め水分はすべてリサイクルされます。このような物質的な循環の面はもちろん、ISSが国際チームであることもそう呼ばれる理由でしょう。3時間程度でISSに行けるほどに宇宙が近くなった世界で、我々は地球号の一員として国境を越えて地球に対するふるまいを考えるべきなのかもしれません。
(水圏生物科学専修 小岩 あい)

文部科学省 地球観測技術等調査研究委託事業「バイオ有機素材の宇宙リサイクルシステム開発 」との共催

2022.03.01

実学研修
SOMPO環境財団CSOラーニング制度/公益財団法人パブリックリソース財団

「支える人を支える」伴走支援で心をつなぐ

「食品ロスの削減と食の貧困の同時解決に向けたアプローチ:我が国の食料安全保障向上においてフードバンク・フードパントリー活動(FB活動)が果たす役割と意義に関する一考察」と題して行ったワン・アーソロジーⅡの一環として、公益財団法人パブリックリソース財団でのインターンシップ、ならびに公益社団法人東京子ども子育て応援団のFB活動に参加しました。生産から消費までを含むフードシステムの様々な段階において食品ロスが発生している一方で、栄養バランスの取れた食事を満足に食べられない人がいる現状を「食料問題」と捉え、その解決に向けたアプローチとして「食品ロスとして廃棄される食品を、必要としている方たちに届ける取組み」であるFB活動に注目し、文献調査や現場での活動を通してFB活動の持続可能性や日本の食料安全保障における重要性を考えました。
パブリックリソース財団では、休眠預金を資金源とする「中核的フードバンクによる地域包括支援事業」に関わらせていただき、文献調査や団体を運営している方たちへのヒアリングに参加しました。それぞれの地域で核となるFB活動の活性化支援が地域の食料安全保障の向上に繋がることを感じたとともに、FB活動の社会的な意義やその効果、課題などを見通す機会となりました。
また、東京子ども子育て応援団では、特に国内の食の貧困に際して問題となっている食の「質」に着目し、野菜を調理する時間的・精神的な余裕がない世帯でも野菜を利用しやすいよう、一次加工(カットやすりおろしなど)を施した野菜を小分け・冷凍して提供する試みがなされており、利用者アンケートから一定の効果があることがわかりました。今後も、現場での活動や研究を通して国内のFB活動の展開を注視し、安心・安全で栄養バランスの取れた食をすべての人が手にできる社会を目指して活動を続けたいと思います。
(農業・資源経済学専攻 川瀬 翔子)

2021.08 - 2022.02

実学研修
横河電機株式会社

人と地球にやさしい食事とは−培養肉の可能性

今回は、人と地球にやさしい未来の食事とは何かというテーマで、横河電機株式会社の皆様と共に実学研修を実施しました。2030年にはタンパク質需要の増加に供給が追いつかなくなるとされており、新しいタンパク質生産の形を模索する中で、人に必要な栄養素を兼ね備え、さらに家畜を育成する必要がなく、食べられる肉の部分だけを人工的に増やすことができる培養肉に着目しました。
オンラインでの活動が中心となりましたが、培養細胞技術研究の現場や、培養液循環への藻類の活用等の専門家の方々にヒアリングを実施しました。それを通じ、持続可能な培養肉生産を都市で実現するというコンセプトを検討・提案しました。これは肉の大消費地である都市部でも肉を生産し、供給を安定させること、そして肉を育てるために必要な養分を藻類の光合成によって賄うことで、肉の生産を持続可能にすることを目指したものです。これらの検討を進める中で、培養肉の現状・将来像への理解を深めました。
生産から消費にかけて無駄のない、人にも地球にも最適な食事に対して、培養肉が果たす役割について今後も注目していきたいです。
(生産・環境生物学専攻 和田 真輝)

2021.07 - 2021.12

実学研修
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)

気候エネルギー問題にNGOとして携わるとは

私は公益財団法人SOMPO環境財団が設ける「CSOラーニング制度」という制度を利用し、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)にて約8ヶ月インターンさせていただきました。WWFジャパンは野生生物や森林、海洋の保全、持続可能な自然資源の活用の推進など幅広い活動をしている団体です。私は主に気候変動対策や再生可能エネルギーの普及促進に取り組む部署にて受け入れていただき、関係するさまざまなリサーチ業務やスタッフブログの執筆などに取り組みました。例えば、地熱発電開発の規制緩和は気候変動対策の一つですが、一方で開発の適地が国立公園内に多く分布するため環境保全との間にトレードオフが生じます。規制緩和に対するWWFジャパンとしての意見形成のため、国立公園内の保護区分の分布について地理情報システムを用いた分析を行い、実際に環境省の審議会資料の一部に反映することができました。大学で学んだスキルを実践的な場で役立たせ、環境問題について視野を広げることもできた貴重な経験となりました。
(生圏システム学専攻 森 健人)

2021.08 - 2022.03

実学研修
株式会社Chicabi

日本の酪農、100年後の未来

株式会社Chicabiで、「100年後まで日本の酪農を残すには」という大テーマのもと、半年にわたって実学研修を行いました。昨年度はオンラインでのみ行われた本研修ですが、今年度はChicabiの方々のご尽力により、子牛の預託牧場を併設するキャンプ施設「千葉ウシノヒロバ」にて、現地活動を行うことができました。
私は、「アニマルウェルフェアを日本にも広める」ことをテーマに設定しました。欧米でアニマルウェルフェアに基づいた流通規制が始まっている今、日本も同調することが有益であると考えたからです。そして、「牧場を併設する千葉ウシノヒロバを選ぶ消費者は酪農への関心が高い」という前提のもと、アニマルウェルフェアを啓発するパンフレットを作成・千葉ウシノヒロバで配布し、その効果をアンケート調査で測定しました。
パンフレットで人々の考え方を変容させるのは容易ではなく、倫理観の問題であるアニマルウェルフェアを普及させることの困難さを痛感しました。しかし、この倫理的・抽象的で取っ付きにくい課題に長い時間をかけ、熟考することができたのは大きな収穫です。現地での活動も、社会実装の第一歩として非常に有意義なものになったと考えています。
(国際開発農学専修 小坂 七海)

2021.07 - 2022.03

実学研修
住友林業株式会社

日本の林業の未来を考える

私は「日本の林業の未来を考える」をテーマに、住友林業株式会社で実学研修を実施させていただきました。日本林業の問題点として、収益面では造林などの諸経費に対して木材価格が釣り合わない点、加えてミクロな視点では、木材を集める架線の設置ノウハウを持つ技術者減少への対策、木材のトレーサビリティ向上といった課題が挙げられます。本研修では、住友林業社有林(愛媛県新居浜市)、住友林業筑波研究所への現地訪問、さらに木材流通を専門に扱う住友林業フォレストサービス様へのヒアリング等を通じ、問題の把握と解決策の模索を試みました。また、未来の森林経営を考えるにあたり、炭素クレジットによる森林ファンド経営を想定し、どの程度の炭素価格であれば森林経営を持続できる収益を得ることができるか、という簡易的なシミュレーションも行いました。足下の課題に取り組みつつ、未来の森林経営像を描くという2つの視点で、これからも林業の問題解決に取り組もうと思います。
(森林科学専攻 金子 竣亮)

2021.07 - 2022.03

実学研修
東洋水産株式会社

食品製造の現場から食品ロス削減を考える

私は東洋水産株式会社のご協力のもと、「食品ロス問題」をテーマに実学研修をさせていただきました。当研修では、東洋水産(株)関東工場(群馬県館林市)にて即席麺の製造過程を見学し、食品残渣が発生するポイントや食品廃棄物の処分方法について学習しました。通常の工場見学では見ることのできない場所まで入り、食品製造の現場を隅々まで観察できたことは貴重な経験になりました。また、工場見学を通して考えた食品ロス削減方法や食品残渣の有効活用方法を提案し、東洋水産の方々と議論をさせていただきました。食品ロス問題には高品質を求める日本の消費者意識が影響していることも論点となり、技術的な話だけで解決できるような単純な問題ではないことを痛感しました。しばしば農学徒は農作物の生産性ばかりに注目してしまいがちだと思いますが、農作物生産から食品加工、流通、廃棄までの一連の流れが安定していなければ「持続可能な食」は成り立たないことを再認識し、広い視点をもって物事を考えることの重要性を学びました。
(生産・環境生物学専攻 吉山 優吾)

2021.07 - 2022.02

One Earthology Seminar 2021
【オンライン開催】
テーマ「土」

100年後の大地を想う
2nd round

2月のOne Earthology Seminarは「地球を出て暮らす Part 2 〜土と人との持続的な関係を考える〜」をテーマに、素材としての土やその利用方法、そして土のある生活の豊かさについて議論しました。今回の目的は、食糧生産に注目する中で土の重要性と有限性を改めて考え直すことでした。9月に開催した1st Roundの続きのシナリオとして、とある惑星に不時着した宇宙船を舞台に、限られた土をどう有効活用しどのように食糧生産を進めるかという課題に取り組みました。究極の条件を与えられ、どのグループも学生と大人が一緒になって活発に議論していたように思います。1つの宇宙船の規模で考えたので資源が有限であることがわかりやすかったですが、地球という大きな規模でもそれは変わりません。資源を効率的に利用して循環によって枯渇を防ぐためには、物質循環の把握が重要であると特に感じました。また、精神的な余裕を持つこともますます大事になってきます。いくら逼迫した状態でも自分たちが生きる意味は何なのか、そういった意義を見失ってはならないと感じました。
(応用生命工学専攻 鳥井 要佑)

2021.12.22

第7回 LUC Lecture
【オンライン開催】

資本論×バイオエコノミー 豊かな生活ってなんだ?
―わたしたちが向かうべき未来とは―

OEGs育成プログラムでは地球の今、そして将来を考え続けています。環境問題について考えるとき、切り離せないのが経済の話です。今回のLUC Lectureは経済思想・マルクス経済学が専門の大阪市立大学 斎藤幸平准教授を講師に招き、私たちが目指すべき「豊かさ」とは何か、資本主義のもとで持続可能性を追求しようとする現在の社会が抱える問題について、ご講演いただきました。新たな技術革新によって“環境に優しい“成長を目指そうとしても、実態は「気候正義」の名のもとに、そのツケを立場の弱い人々に押し付ける構図になっているとして、無限の成長を是とする経済システムの限界を指摘されました。
確かに、環境問題に限らず、昨今浮かび上がっている様々な社会問題は、経済成長を掲げる社会システムの綻びとして現れているものかもしれません。それでは、私たちはどのような社会を志せばよいのでしょうか。国内でもSDGsの機運が高まりを見せているように感じますが、今の取り組み方でその先に目指す社会を見据えることができているのか、立ち返った議論も必要かもしれません。
(生産・環境生物学専攻 室 智大)

ハイライトシーンのダイジェスト動画はこちらをご覧ください

2021.05.19

One Earthology Seminar 2021
【オンライン開催】
テーマ「生物多様性」

100年後の多様な命を育む
2nd round

テーマ「⼈と⽣物のゆたかな暮らしを叶える、ある町の活動計画を考えよう」のもとで、開催された生物多様性の2回目。架空の街において、生物多様性の保全に向け、行政が提示した戦略を市民にとって血の通ったものにするべく議論して意見書をまとめるという立て付けだった。日ごろから、環境政策は立案された後でいかに市民の協力や理解を得るかは重要と感じていたが、その難しさを様々な観点で感じた。問題意識がない市民に対しても行政サービスとして還元することの限界、環境教育を社会システムに組み込むには不足する行政資源、生物多様性の保全と自然の豊かさを推しにした街づくりという両立すると思われた政策のずれ。如何に絵に描いた餅で済ませないか、一方で小さくまとまらずに結果も確実に残す、そのためにも産官学に加え、市民との熟議が求められると実感した。正解が無く、確実に状況が悪化していく生物多様性保全のフロンティアに今後身を投じる立場としては、気合を入れ直す良い機会となった。
(獣医学専攻 大谷 慧)

2021.11.17

One Earthology Seminar 2021
【オンライン開催】
テーマ「食」

100年後の「いただきます」を考える
2nd round

今回のテーマは「持続可能な食の選択を考える」です。 今年度の「食」テーマでは「食材を購入し、調理して食べ栄養になるまで」にフォーカスしており、今回は「食材を購入」するところに着目しました。地球にとってもヒトにとっても持続可能な食生活を続けるためには食材の購買の段階でどのような選択が必要となるか、また、そのために売り手側はどのような工夫をすべきかについてスーパーマーケットの野菜売り場を題材に考えました。
ディスカッションを経て各グループが提案したソリューションには共通する部分が多く、ほとんどが環境負荷の低い商品を選んでもらうためのポイント制の導入をあげていました。
しかし環境負荷への注意を惹く目的で提案されたポイント制には、数値化することの難しさや、数値情報にとどまらない環境への影響に関する具体的な情報を提供して消費者リテラシーを向上させるべきではないのか、といった疑問が残りました。
今回のセミナーでは、100年後の未来でも楽しくておいしい食卓を続けていくためには消費者の意識と小売りの工夫が必要不可欠であることが実感をもって認識できました。
(水圏生物科学専攻 小竹 真帆)

2021.10.20

実学研修
株式会社重次郎中屋敷ファーム

肉牛生産の持続可能性を考える

持続可能な牛肉生産を考えるために、次世代につながる畜産を目指して様々な取り組みを行なっている岩手県雫石町の株式会社重次郎中屋敷ファームにて実学研修を行いました。コロナ禍ではありましたが、2週間雫石町へ滞在させていただき、朝晩に牛へミルクやりや水やりを手伝いながら現場を見て、そこに関わっている方々とお話しさせていただきました。
畜産の大変さを、一端ではありますが知ることができました。また、研究や流通、消費の各分野で、株式会社重次郎中屋敷ファームとともに国産飼料の開発と使用、経産牛の再肥育などの持続可能な牛肉生産に向けた取り組みを行っている方々とお話しすることで、刺激を受けることができました。
畜産は肉という商品の形で身近にあるはずですが、問題を抱え、生産現場を消費者が意識することはできていない状況にあることを痛感しました。今回の現場での経験を経て、畜産業について消費者の立場からも自分の専門分野からも考え続けていきたいと思いました。
(応用生物学専修 津旨まい)

2021.08 - 2021.11

One Earthology Seminar 2021
【オンライン開催】
テーマ「土」

100年後の大地を想う
1st round

9月のOne Earthology Seminar「地球を出て暮らす 〜方舟に土は必要か〜」は、土の役割や価値をゼロから考えるという目的で企画されました。長い時間をかけて形成される土は地球の大切な資源ですが、人間とのつながりを考えると食糧生産ばかりが思い浮かびます。例えば、植物工場での水耕栽培が非常に発達して露地栽培の必要がなくなったとき、私たちと土の関係はどうなるのでしょう?
「地球船宇宙号」とよく表されるように、人類は地球の限りある資源を一つの星の中で消費してきました。本当は、この循環における土の位置付けを把握したいところです。しかし、マクロな視点で見た循環は、循環システムのモデルや異なる分野同士のつながりなど抑えるべきポイントが多く、一度に議論するには大きすぎるテーマです。
そこでまず、今回のワークショップでは、宇宙に人工的に作られた閉鎖空間を想定しました。半永久的に移住するという設定のもと、内部の物質循環について、そしてそこに「土」が必要なのかを議論しました。議論を進めるうえで、「食」や「生物多様性」あるいは「文化」など様々な他の項目も同時に考えなければなりません。議論の焦点はグループによってまちまちで、難しいテーマに頭を悩ませながらも多くの視点を得ることができました。
また、土とは何か、その定義から考える良い機会にもなりました。人間には地球の土が必要なのか、必要でないのか、あるいは移住先で得られる素材を砕くことで機能としての「土」を得るのか。議論の余地はたくさん残っています。12月に予定している2nd roundが今から楽しみです。
(応用生命工学専攻 鳥井 要佑)

2021.09.29

One Earthology Seminar 2021
【オンライン開催】
テーマ「生物多様性」

100年後の多様な命を育む
1st round

「生物多様性」を題材とした今回は、「人と生物にとってのゆたかな暮らしを叶える、ある町の活動計画を考えよう」をテーマにワークショップを行った。
5つのグループに分かれ、生物多様性が脅かされている架空の町を舞台に、その町の住民や関係者になりきって議論を交わし、活動計画を検討した。
異なる立場の理想をまとめての政策立案・決定は容易ではなく、特に「生物にとってのゆたかな暮らし」という視点を入れることが困難だった。また生物多様性保全のために取り組むべき点がいくつか考えられはしたが、実現可能性を考慮すると具体的な活動計画をなかなか描けない歯がゆさも感じた。
生物多様性の保全にはパラダイムシフトが必要だが、その変革をもたらすためには幅広い分野に介入することが不可欠だ。その全てに漏れなく取り組むためには、OEGsに求められる巻き込み力が必要になると改めて感じた。
(生圏システム学専攻 田中 虎太郎)

2021.08.25

実学研修
株式会社ポケットマルシェ

「つながり」を創出して一次産業を応援する

私は「食を通じて個と個をつなげるポケットマルシェの生み出す価値やこれからの役割について考える」というテーマで、株式会社ポケットマルシェで約半年間実学研修を行いました。私は生産者チームに所属し、生産者さんの売り上げについて考えたり、利用する上での要望を叶えたりといった業務に携わりました。登録している農家さんへのヒアリングでは、お客さんとの交流をやりがいに感じるという声が多く、ポケットマルシェの創出する人同士の「つながり」が、消費者だけでなく生産者にとってもモチベーションの面で重要な要素になっていることがわかりました。一次産業を活気づけていくための一つの方法として、このように食品の購入に紐づく新たな付加価値を創出することは有意義だと感じました。ポケットマルシェでの購入のあり方を一例に、価格に代わる価値やその伝え方を考えるという視点を得られたことは、今後の自分にとって有意義な学びとなりました。
(国際開発農学専修 渡辺 陽祐)

2020.10- 2021.03

One Earthology Seminar 2021
【オンライン開催】
テーマ「食」

100年後の「いただきます」を考える
1st round

 今回のテーマは「個に配慮した未来の献立を提案しよう-ある家族の食卓-」です。仮想の未来という設定で、とある4人家族の夕食の献立を議論しました。食材やエネルギーの制限がある一方で、技術レベルは発展している、家族のそれぞれが健康などに関しての問題を有しているなどの設定を踏まえて家族の食卓と栄養面の検討を4グループに分かれて行いました。
興味深かったのは、人によって重視する点が違うということです。とにかく楽に作れることを意識する人がいれば、家族みんなで仲良く食べることを意識する人もいました。一方で、食事を一人ですることに全く抵抗がない人なども見受けられました。
学内のみならず社会人やOB,OGなど学外の人も多く参加しており「食」に対する多様な考え方を学ぶことができました。また、今回のように使える食材が制限されるような未来が訪れると、どれだけ技術が発展していてもなかなか思うように「食」を楽しむことができなくなるとも感じました。現代の「食」が果たして持続的なものなのかどうか考えさせられました。
(生命化学・工学専修 石井 優人)

2021.07.28

実学研修
住友林業株式会社

日本林業の未来を考える

住友林業株式会社で「日本林業の未来を考える」をテーマに実学研修をさせていただきました。住友林業株式会社の方々や東大の先生方のご協力により、筑波研究所見学や、紋別山林事業所、紋別バイオマス発電株式会社、北海道演習林の方々にオンラインでヒアリングをさせていただきました。その過程で、日本において林業をビジネスとして成り立たせる上では育林保育に課題があることを学び、さらに調査をすることにしました。林業白書の精読や専門の先生へのヒアリングなどを通じて、理解を深めました。さらに自ら森林ボランティアに参加し、育林保育の作業を体験しました。実際に現場に行ったことで、日本の急峻な地形がもたらす弊害を自分事のように感じるようになりました。今後もさらに日本林業について理解を深め、課題を解決できる行動が出来たらと思います。
(生物材料科学専攻 安田 郁)

2020.07-2021.02

実学研修
横河電機株式会社

マングローブ生態系に学ぶ、水産資源の涵養法

OEGs育成プログラムでは、必修単位「ワン・アーソロジー」の活動として、学外における実学研修を行っています。この実学研修において、受講生は企業やNPO法人と共に社会課題の解決策を議論し、その実装を試みます。私たちは、持続的な水産資源の確保に向けて、マングローブ生態系のような沿岸生態系における生物生産の仕組みを活用することで、海洋の生産力を向上させることを目指しました。新型コロナウイルスの影響で学外活動が行えない状況下でも、研修の受け入れ先である横河電機株式会社の方々や、農学生命科学研究科の教員が務めるアドバイザリーとのリモート会議を継続し、約半年間、文献調査をベースとした有意義な議論を行うことが出来ました。報告会でも、学内外の多くの方にご参加頂き、多数のご質問・ご意見を頂きました。私たちはふだん実験室内で植物の研究を行っていますが、今回は水産の現場で起こる問題について深く考え、専門家と対話する機会を得ました。経済性と持続可能性の二軸を対立させない提案を行うのは難しかったですが、『生物による資源生産の仕組みを知り、人間のために活用する』というアプローチの汎用性を確認できたことは、私たちの専門にも生かせる、大きな収穫でした。地球上の資源を、100年後の人類に、より良い形で受け渡すために。私たちはこれからも、提案を続けていかなければならないのだと感じました。
(応用生命工学専攻 鳥井 要佑、生物材料科学専攻 小松 聡浩)

2020.08-2021.02

実学研修
株式会社Chicabi

企業と考える「100年後まで日本の酪農を残すには?」

株式会社Chicabiでの実学研修では、仔牛の預託事業を行う複合型観光施設「千葉ウシノヒロバ」を通して日本の酪農の現状とこれからについて考え、100年後まで日本の酪農を残す方策についてChicabiの方々とともに議論しました。新型コロナウイルスの影響により、オンラインでの研修となりましたが、約半年間にわたり、様々なバックグラウンドをもつメンバーで、酪農の将来について活発な議論を交わすことができました。また、研修の最後には、100年後まで日本の酪農を持続させるための提案を行いました。持続可能な地球を目指している私たちにとって、持続可能性の実現のための具体的な手段を多様な知識と経験から考えた本研修は有意義なものになりました。
(農業・資源経済学専修 餌取 拓未)

2020.08-2021.03

実学研修
公益財団法人オイスカ

ただ「植える」だけじゃない

私は約半年間、公益財団法人SOMPO環境財団が主催する「CSOラーニング制度」に参加し、公益財団法人オイスカでインターンをさせていただきました。主な業務として、子どもたちが学校や隣接地で苗木を育てることで環境教育と植林活動を進めるプログラムである「子供の森」計画に携わりました。準備から植林後の管理に至るまで、気候や文化が違うそれぞれの現場では多種多様な工夫がされていることがわかりました。楽しそうな子どもたちの写真や自然への思いが込められた絵を拝見し、心が温まるとともに環境教育の重要性を実感しました。報告書のまとめや会計確認などの事務所で行う業務以外にも、宮城県にある海岸林で実際に管理作業を行ったりなど、本当に多くの経験をさせていただき、この実学研修は自分にとって大きな一歩となりました。
(緑地環境学専修 橋元 菜摘)

2020.08-2021.03

第6回 LUC Lecture
【オンライン開催】

自分らしい未来を切り開く機会を地方が育むことで生まれる持続可能性

今回のLUC Lectureでは、公益社団法人MORIUMIUSフィールドディレクターの油井元太郎様にご講演いただきました。モリウミアスは、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市雄勝町の廃校を舞台に、雄勝の豊かな森や海、そして雄勝に住む人々から、子どもたちが自然の中で暮らすことの価値を学ぶことのできる複合体験施設です。自然の中で様々な活動を行うことによって子どもたちの「生きる力」を育てると同時に、地域の魅力を伝える活動を行う油井様の思いや考え方をお聞きすることができました。食育や農業教育についての質問にも快くご回答いただき、教科書だけではわからないことを数多く学ぶことができました。油井様が事業を行う上での考え方もお聞きすることができ、自分自身の生き方についても学ぶことの多い講演になりました。
(農業・資源経済学専修 宇都宮 涼)

2021.04.07

実学研修
株式会社環境ビジネスエージェンシー

「ワンアーソロジーⅠ」
実学研修報告会
~熱海の天然林再生計画~

実学研修は受講生が企業やNPO法人と協力し、学外で社会課題を見つけ、解決法を考え、実際に行動につなげる「学び」「実践」の機会です。新型コロナウイルスの影響で活動が難しい時期もありましたが、私は約一年間の研修を終え、「熱海の天然林再生計画」という表題で報告を行いました。報告会には研修先の方々や学外の多くの方にもご参加いただき、質問や今後への意見などを多数頂きました。私自身は作物の研究をしていますが、専門とは異なる森林という分野においてNPO法人と協力しながら放棄林問題に取り組みました。その過程で生態学や現地の方とのコミュニケーションなどといった自身の専門とも深く関わる分野を結び付けて学ぶことができました。このように分野を超えて幅広い社会課題に興味を持ち、行動を起こすことは100年後の地球を守る地球医には欠かせない姿勢であり、報告会で多くの大人を巻き込み、議論できたことは大きな成長につながったと思います。
(応用生物学専修 田口 一輝)

2019.9-2020.12

シンポジウム
【オンライン開催】

公開シンポジウム
地球の経営を考える~農学がつなぐローカルとグローバルの両輪~

地球上の限りある資源を、私たちはこれからいかに使って地球を”経営”していくのか?特にフードシステムを切り口として、グローバルバリューチェーン、農村の価値、消費者との接点である小売業、金融などなど、様々な視点から熱いディスカッションが交わされました。
「システム全体が変わるためのきっかけとは何か?」「GDPは伸び続けなくてはいけないものなのか?」参加者からも鋭い質問をいただきながらのクロストークの内容とご講演を合わせたハイライトシーンのダイジェスト動画をYouTubeで公開しています。
YouTube動画

講師やプログラムは こちら をご覧ください

2020.10.31

LUC Lecture - Spotlight - 01
【オンライン開催】

水環境の保全における排水処理の役割

LUC Lecture -Spotlight- は、OEGs受講生たちの「この人のこの話が聞きたい=スポットライトをあてたい」を実現する場として新たに企画されました。初回となる今回は、OEGs2期生の神戸朱琉さんの提案・企画により、栗田工業株式会社開発本部 飯泉太郎 氏にご講演いただきました。公害の歴史から、微生物による浄化、地球の水の循環、社会課題との接点など多彩な話題を提供いただき、受講生との議論も活発に行われました。

2020.09.29

One Earthogy Seminar_SPINOFF
【オンライン開催】

Visionary Future Magazine OEGs_バイオエコノミーを特集する架空雑誌の記事をつくろう

この企画内容は、架空の技術や理論の発見・発明がされたと想定し、「こんな未来を実現したい」という野心に満ちたビジョナリーな記事をつくろう、というものです。
私が出したアイディアは、「リアルツリーマンション」という、生きた巨木に人の居住スペースを埋め込んだマンションです。巨木は未来の技術で開発された10年で直径10mに成長するエリートツリーを利用します。このアイディア、学部生時代に台湾で出会った巨木と「となりのトトロ」のワンシーンから着想を得ました。アイディア出しに詰まり、ふとアルバムの写真を見た時、大きな洞のある台湾の巨木の写真を見つけ、「そういえば、これ見た時、住めそう~とか思ったよな。あ、じゃあツリーハウスに関する記事にしようか。」という考えに至り、こんな巨木どうしたら手に入るんだろうか、と思った時に「となりのトトロ」でメイちゃんとサツキちゃんとトトロ達がどんぐりの木を急成長させる儀式をしているシーンを思い出し、「技術の進展で、成長が超早いエリートツリーが開発されたことにしよう!」という発想に至りました。そういった経緯で考え出した「リアルツリーマンション」、社会に与える影響について考えてみると、「リアルツリーマンションが都市を覆えば、二酸化炭素たくさん吸収して温暖化防止につながりそう」、「未来ではセルロースナノファイバーの需要が増加して、建築用と化学用で木材を奪い合うかもしれないから、山の木は化学用、都市の木は建築用で住み分けが出来そう」、「木が身近にあるから、QOLが上がりそう」というように、現在抱えていたり将来私たちが直面しそうな問題を解決してくれるかもしれないことに気が付きました。アニメや空想の世界がアイディアを膨らませてくれたり、それによって得られたアイディアが社会課題を解決するかもしれないと思いました。
今回はアイディア→社会課題の解決に発想を膨らませましたが、何か課題解決したいときにアニメなどの空想の世界を思い出してみると、素晴らしいアイディアが出てくるかもしれないですね。
(生物材料科学専攻 安田 郁)

2020.11.04

One Earthology Seminar 特別企画
【オンライン開催】

ポストコロナの気候変動対策 〜気候危機を生きる私たちのnew normalとは〜

私たちはポストコロナの時代のnew normalをどう形づくっていくべきか?新型コロナウイルスの問題が与える示唆にも目を向けつつ、気候危機のさなかにある私たちができること、すべきことをスピーカーや参加者の皆さまと考える場として開催しました。
当日の動画や参加者の声をFacebookで公開しています。Facebook記事
講師やプログラムはこちらをご覧ください

2020.07.14

OEGs After COVID-19 Workshop
新型コロナウイルスで変容した後の社会を予測してOEGs として提案できることを考える〜 【オンライン開催】

ポストコロナの世界を次世代に繋ぐために

今回のワークショップでは、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、医療・公衆衛生、食糧・農業、働き方・もの・エネルギーの消費がどのような影響を受けて、どのように変わっていくのかを議論し、ポストコロナの理想の地球を描き、そこに対してアプローチする方法を模索した。例えば医療・公衆衛生の観点からは誤った情報が拡散され混乱が生じたことや患者への誹謗中傷によって感染を報告するリスクが生じている問題を取り上げ、科学に対する正しい知識を議論するサイエンスコミュニケーションの場を整備することと、感染の発生報告を責めるのではなく、早く報告してくれてありがとうと言えるような社会を目指して、教育やサイエンスコミュニケーション、ネットリテラシーなどの課題に取り組む必要があると考えた。また食糧の観点からは非常事態において最貧困層が食料にアクセスできない事態が起きており、一方で大量の食品ロスが出るなどフードシステムの課題が顕在化した。国内外において食糧生産の過程の持続可能化、自給可能化を目指すことが環境負荷の低減や食糧供給の安定化につながると考えられる。
新型コロナウイルスの蔓延に第二波があると考えられている以上、一度目の感染拡大で明らかとなった課題を今度は武器にして、ポストコロナの世界を次世代に残したいと思える世界にする義務が今を生きる私たちにはあるのである。
(応用生物学専修 田口 一輝)

2020.05.20

第5回 LUC Lecture

都市と地方の「分断」を「共感」でつなぐ
自律分散型フードシステム

今回のLUC Lectureでは、都市の消費者が全国の生産者とコミュニケーションを取りながら食べ物を購入できるツール、ポケットマルシェを創設された、株式会社ポケットマルシェ 代表取締役社長 髙橋博之氏にご講演をいただきました。消費者が食べ物の裏側を知り、自分がよいと思う食材を選択することで、生産の現場に意欲的に参加し、分断した都市と地方が繋がるという構図が、ポケットマルシェという自律分散型ツールによって描かれていることを知りました。髙橋氏のご講演や学生も交えた活発な議論の中で、生産者から直接食材を購入するこのようなシステムの問題点を意識しながらも、既存の市場流通の欠点を補完しうる新しいフードシステムの可能性を窺い知ることができました。現在日本が、また世界が抱える様々な問題に関しても、消費者としてそうした問題に参加するためには、また参加を促すためにはどうすればよいのか考え直す機会になりました。
(応用生物学専修 藤原 崚)

2020.01.28

One Earthology Seminar 2019
テーマ「生命」

100年後のいのちを見つめる
2nd round

人類は長い歴史の中で他の動物を利用し続け、その用途も使役動物、食用から医療・科学分野まで多岐にわたる。しかし最近、生命倫理、環境問題などさまざまな観点から、こうした当然のものと思われていた動物利用の是非が問われる時代になった。そんな背景のもと、今回は「人類のための動物利用はアリですか?ナシですか?」というテーマでプレゼンの後、ディスカッションをしました。代替方法があるならば動物を利用しないに越したことはない、これが参加者のコンセンサスだったと思います。しかし、技術的に完全に代替できるかどうか不透明な中、どこに賛否のラインを引くかは人それぞれであり、皆の合意に至る難しさを感じたセミナーでした。
(農業資源・経済学専修 近藤 諒一郎)

2019.12.18

One Earthology Seminar 2019
テーマ「食」

100年後の「いただきます」を考える
2nd round

今回は模擬国連の形式に則った会議形式で給食統制配給制度について議論しました。100年後の日本では天候不順・大型災害などの影響で食料生産が伸び悩み、且つ海外からの輸入も困難であるという前提のもと、コーディネーターの三坂先生が仮法案を提出しました。内容は国民への効率的で安定的な食料供給を図るべく、給食統制配給制度を実施し、全国民は支給される給食以外は口にできないというものです。それについて生産者グループ、消費者グループ、そして政府グループの3グループに分かれての会議でした。少しでも食の選択の自由を残したい消費者、少しでも高く売りたい生産者、国民に平等で且つ税金を無駄に使いたくない政府の三竦みで譲ったり譲れなかったりして落とし所を見つけていく。自分の理想と他の理想をうまく混ぜ込むことの難しさを体感できました。
食料は世界的に見るとすでに偏在するものになっています。今回は僅差で最終法案は否決されました。やはり自分の食べたいものを食べたいという意見が多かったです。でも、いつかの未来で全地球民配給制度もやむを得んとならないようOEGsとして考えていきたいです。
(水圏生物科学専修 小竹 真帆)

2019.11.27

第4回 LUC Lecture_Extended

わたしは何を知り、何ができるのか
〜いま地球で起きていることを自分ごととして捉え、行動する〜

日々、研究室で身につけている研究能力は、実社会においてはどのような場で、どのような形で求められ、どのような過程を経て社会に還元されているのか。今回は、UNHCR駐日事務所 副代表 河原直美様より『地球市民として-難民問題から地球を考える』、富士通株式会社サステナビリティ推進本部 環境統括部 環境デザイン部、博士(環境科学) 永野友子様より『一企業人になって分かったこと: SDGs達成のための「巻き込み力」と「多様性」』というテーマでそれぞれご講演いただきました。河原様からは、難民の定義に始まり、難民問題の発生に伴って引き起こされる環境的な課題を教えていただき、永野様からは、国の研究所や企業、災害時のボランティア活動などにおける、研究者としてのスキルの活かし方を学ばせていただきました。また、お二人とも現在のポジションに就くまでの経緯を、当時の状況や心境を交えてお話してくださり、交流会でも質問に快くご回答いただいたので、学生にとっては自身のキャリア選択という点からも学ぶ点が多い機会となりました。
(One Earth Guardians育成プログラムTA 応用動物科学専攻 中田 理沙)

2019.11.16

One Earthology Seminar 2019
テーマ「木」

木と暮らす100年を考える
2nd round

今回のディベートでは2050年までにアマゾンの熱帯林を増加させるためには何ができるかを先進国・現地政府・生物という三つの立場に分かれて提言、議論を行った。
アマゾンの森林を増加させるためには何ができるのか。先進国に暮らす私たちはそこにいない、そこに暮らしていない。技術の進歩でそこにいない私たちもアマゾンで起きていることを細部まで知ることができるようになる中で、私たちの環境に対する取り組みが先進国のエゴになってしまっていないか、かといって経済的理由から何もしないという無責任な姿勢をとるのはどうなのか私たちは今問われている。様々なステイクホルダーがいる中で先進国と途上国という二項対立にとらわれず当世代と次世代、生物と人間という見方をすればとるべき行動は変わってくるはずだ。規模は小さくとも動ける単位で行動を起こしていくことが消極的な人々に、次世代に背中を示していくことになる。なんのために?30年後に次世代の子供に“How dare you?”と言わせないために。
(応用生物学専修 田口 一輝)

2019.10.23

実学研修

2019SP「ワン・アーソロジー」
実学研修報告会

2019年度の実学研修報告会が開催されました。実学研修は学生が大学を飛び出し、企業やNPO法人などの協力のもと活動を行う「学び」の機会です。2年目となる今年は活動の幅もますます増し、企業における研究活動からNPO法人での企画運営まで、多様な活動内容の報告がありました。報告には学生や教員のほか、研修先の方々をはじめ学外の多くの参加者が集まり、様々な立場からの質問や意見が出されました。
100年後の地球を守る。そのためには大局的な視点に立って、異なる分野を有機的に結びつけながら課題解決をしていくことが不可欠です。実学研修で育んだ学生それぞれの視点や経験を、どのように深化・融合して将来の課題解決に生かせるか。研修を通して学んだことを顧みて共有することの重要さを感じると同時に、今後の活動が楽しみになるような報告会となりました。
(応用生物学専修 室 智大)

2019.10.07-08

One Earthology Seminar 2019
テーマ「生命」

100年後のいのちを見つめる
1st round

今回はディベート形式でヒト受精卵のゲノム編集の是非を考えました。事前に賛成派と反対派に別れて考えをまとめたため、精錬された意見が多かったように思えます。近年、ゲノム編集食品について世の中では多くの議論がなされています。しかし、100年後にはゲノム編集技術を人間に利用することが当たり前になっているかもしれません。新たな技術を目の前にしたときに、その使い方はどこかで誰かが判断しなければなりません。そのときに備えて我々一人一人が技術に対する倫理感を持ち合わせていることが大切だと思います。正解のない課題について議論する難しさや重要性を改めて感じたセミナーとなりました。
(生命化学・工学専修 鳥井 要佑)

2019.09.18

英語講座

Basics for Science Communication in English
〜英語で学び、英語で話す 科学の基本〜

科学の基本を英語でどう話せば良いか。単語を知っていても話せなければ意味がありません。1週間の集中講義では講義中の日本語は原則禁止。全て英語で課題文を音読し、グループメンバーとディスカッションをし、回答をフルセンテンスで記述する。講義の初めこそ固まってしまって発言を躊躇う人もいましたが、講義の終盤では皆が読み、話し、書くことに慣れ、朗らかに課題に取り組んでいました。内容もセントラルドグマや遺伝子変異といった基礎的な知識から始まり、テオシントとトウモロコシの遺伝的な違いや人種によるラクターゼ活性の違いといった、ちょっと面白い応用的なものまで扱いました。重要なのはフルセンテンスを意識すること。きちんと相手に伝わる英語を話す練習をしました。
英語は意思疎通のための道具の一つであること、そして英語を扱う上では慣れが非常に重要であることを改めて痛感しました。英語に対する心の壁が、低くなった気がします。
(水圏生物科学専修 小竹 真帆)

2019.09.2-6

One Earthology Seminar 2019
テーマ「食」

100年後の「いただきます」を考える
1st round

100年後の人類は何を食べているのでしょうか。必要な栄養素をサプリメントで摂取しているかもしれませんし、昆虫食が普通になっているかもしれません。そのような背景をもとに日本人として、さらに地球人としてまもりたい食について話し合いました。様々な視点から議論がなされましたが、食がなくなるのは仕方がないという意見が私にとって最も印象的でした。食糧危機が予想される以上、100年後も今と同じものを食べている可能性は限りなく低いでしょう。食の変化を受け入れつつまもりたい食に優先順位をつけることが、食をまもるための唯一かつ最善の手段なのではないかと考えました。
(農業・資源経済学専修 宇都宮 涼)

2019.07.17

第3回 LUC Lecture

農林水産・食品分野における標準・認証について
〜グローバルに羽ばたくための標準・認証講座入門〜

農林水産物を広く展開し、価値を伝える上では、品質を保証して社会的な信頼を得ることが重要になります。その上で重要となる規格、JAS(Japanese Agricultural Standard)の成り立ちや、日本としての今後の戦略について、農林水産省 食料産業局 食品製造課 基準認証室 室長 矢澤 祐一 氏にご講演いただきました。講義ではまた、国際社会の中でルール作りに携わることの重要性、SDGsなどの社会的課題に対する解決モデルの標準化に向けた展望なども話題にのぼりました。講義の最後には、規格を導入することの費用対効果をどう考えるか、SDGs対応策をどのように規格化するかなどについて、参加学生からの質問があがりました。
(アグリコクーン食の科学フォーラムグループによる講義「食の科学ゼミナールⅡ/食の安全システム演習」に参加の形で開催しました)

2019.07.02

One Earthology Seminar 2019
テーマ「木」

木と暮らす100年を考える
1st round

夏至が近づいた日の夕暮れ、木に囲まれたセイホクギャラリーで100年後の地球を考える。今年度第1回目のOne Earthology Seminarでは、森林資源の現状と課題について取り上げました。コーディネーターとして森林科学専攻の丹下教授にご登壇いただき、国連機関FAOのレポートを中心に、議論のベースとなる世界の森林をとりまく状況について理解を深めました。また、その後は小グループに分かれて学生や教員、企業からの参加者などと密な意見交換を行いました。私のグループでは、広い問い「なぜ森林を伐採するのか?」からスタートした話の展開により、現在の課題を多面的にとらえることができました。今回のセミナーを皮切りに、この1年間地球規模のテーマについて考え議論していきたいと思います。
(応用生命化学専攻 橋本 秀一)

2019.06.19

第2回 LUC Lecture

Lab to Field, Field to Lab

農学の研究室での成果を、どのようにフィールドに応用するか。フィールドでの結果を見て、如何に研究にフィードバックするか。「実学」たる農学は、このサイクルが回ってこそ推進します。本研究科森林科学専攻・丹下健教授より「熱帯現象を東南アジアの事例から考える」として、本研究科応用動物科学専攻・後藤康之准教授より「『顧みられない熱帯病』を顧みる:診断法開発の観点から」として、それぞれご講演をいただきました。
講演後の意見交換では、先生方・企業の方・学生を交えた白熱の議論もあり、農学研究の奥深さを感じる時間となりました。
研究を志す一学生として、「実学」たる農学を実践されている両先生方のエピソードに、憧れと尊敬の念を抱きました。自身の研究に向かうモチベーションの向上を感じるとともに、改めて「実学」とは何か、自分の研究では何ができるのかを考える機会となりました。(農業資源経済学専修 近藤 巧)

2019.05.22

実学研修

実学研修説明会(2019SP)

2019年度夏季(SP)の実学研修のマッチングのため、説明会を開催しました。研修を実施いただく企業の方々より、持続可能性やSDGsなどに向け各企業で取り組まれていること、One Earth Guardiansと取り組む研修内容の紹介などを行っていただきました。その後は学生が数名ずつに分かれて各企業のテーブルを訪問し、対話の時間を持ちました。企業の方々と学生とが直接言葉を交わし、より踏み込んだ説明を受けたり、疑問点について質問するなど、各企業の目指す取り組みや研修についての理解を深めました。

2019.05.29 / 6.05

実学研修
公益財団法人日本環境協会

環境活動の「基盤」を作る

私は公益財団法人日本環境協会にインターンへ行き、Youth Econetの立ち上げに参加させていただきました。Youth Econetは10代から30代のユース世代同士の環境活動のコミュニケーションの場になることを目的としており、その立ち上げのためのウェブサイトづくりを行いました。
環境を守るといっても様々なアプローチがあり、それはまた一人ぼっちでは成せない大きなものでもあります。少数の地球医が頑張っても大多数の一般の人が何の興味も持たなければ意味がないのです。一人だけではちょっとのことしかできなくても、協力したらすごいことができる。そのための第一歩を踏み出した研修でした。
(水圏生物科学専修 小竹 真帆)

2018.12 - 2019.03

One Earthology Seminar
全体会 2018

One Earthology 提言
2020に向け、2019年度に私たちが取り組むこと

プログラム1期生の代表者より、2018年度に行った「木」「食」「生命」のテーマ 全6回のOne Earthology Seminarにて議論された内容について報告し、参加者の皆さまと共有しました。また、本研究科の岩田洋佳 准教授からは、「データ科学で品種改良を加速する 〜種苗産業でバイオエコノミーを勝ち抜くために〜」とのタイトルで、研究内容や社会課題解決に向けた展望について講演いただきました。最後に、来年度以降のプログラムの活動につなげることを目的に、「One Earthology提言2020に向け、2019年度に私たちが取り組むこと」とのテーマで、会場の皆さまからのご意見をいただきながら、学内外のパネリストの方々にご登壇いただいてのフロアディスカッションを行いました。

2019.02.28

第1回 LUC Lecture

牛を育て、牛を食べる
- 人と科学ができること -

日々私たちが口にする「牛肉」は、どのような行程を経て生産され、どんな方が携わることで食卓へ届いているのか。岩手県雫石町の畜産農家である株式会社重次郎・中屋敷敏晃 代表取締役より「牛を育てる視点から/重次郎の挑戦」として、牛肉の卸と流通を手がける株式会社東京宝山・荻澤紀子 代表取締役より「生産者と消費者をつなぐ視点から/環境全体から見た畜産業」として、それぞれにご講演をいただきました。
また、基礎研究の成果を畜産に活かす取り組みについて、本研究科の高橋伸一郎 教授が「飼料中のアミノ酸含量で肉質をコントロールする」として実例の紹介を行いました。
全体での意見交換の時間には、より踏み込んだ具体的な経験談や考えが述べられ、議論を深めることができました。生物としての牛や、畜産と環境や地域経済との関わりに着目し、農学からどんな提案をできるのか、それぞれに考えるきっかけとなったかと思います。

2019.02.08

0 to 1 Workshop

私たちの100年後に向けたリーダーシップ研修

株式会社ネクスレッジ・安本篤史 代表取締役社長を講師に、ワークショップを行った。このワークショップでは改善とは何か、問題解決のための道具であるQC手法について、また次世代リーダーについて講義・演習を通して学んだ。これらのことは大学の授業では学ぶ機会の少ない“実学“であり、100年後の地球について考え自ら課題を見つけ主体的に周りを巻き込んで解決をしていく私達One Earth Guardiansにとって非常に重要なことであった。特に次世代リーダーについての話は、自分の今までの生活を振り返り改善する部分が多くあると感じ、私自身のこれからに大きな影響を与えた。
(生物素材化学専修 岡田 拓巳)

2019.02.05-06

One Earthology Seminar
テーマ「生命」

100年後のいのちを見つめる

技術の進歩によって、ヒトや、他の生物の生命のあり方はどう変わるのでしょうか。農学の観点からは、生物多様性も重要なキーワードとなりますが、多様性の価値や重要性とはどのようなものでしょうか?科学技術を以って人間が介入して良い程度とは?これらは正解のない問いであり、様々な価値観や考え方があることを認識するところから議論が始まります。

2018.09.25 / 12.18

第0回 LUC Lecture

「お酢」に託された生き残る力
〜偶然を必然に変える道のり〜

本研究科の特任准教授でもあり、理研発アグリベンチャー・アクプランタ株式会社CEOの金鍾明先生に、酢酸による植物の乾燥耐性化についてお話しいただきました。メカニズムを明らかにした基礎研究の成果から、その社会実装を通して緑資源の維持、増大を目指す未来のための取り組みまで、たっぷりと聞かせていただく贅沢なセミナーとなりました。基礎研究から得られた偶然の発見が、世界中の食料問題や砂漠化の解決につながり、地球にとって大きな必然になる-偶然が必然になっていく最初の歩みに触れることができました。

2018.12.04

One Earthology Seminar
テーマ「食」

100年後の「いただきます」を考える

従属栄養である私たち⼈間は、何かを食べて生きていかなくてはなりません。100 年後、私達は何をどのように食べているでしょうか。食べることの意味は変わるでしょうか。将来の⾷糧危機にどう取り組むのか、本当に環境負荷の少ない⾷糧⽣産とは何なのか。必要とされる技術・社会経済制度・教育にも目を配りつつ、One Earthology 的な⾷の未来の提案を考えます。

2018.11.27

One Earthology Seminar
テーマ「木」

木と暮らす100年を考える

木や森林には、建材の供給源、二酸化炭素吸収源、多様な生物のすみか、新素材原料、私たちの心の癒しなど様々な側面があります。One Earthology的な木の活用方法とは何か、 100年後の地球で、人間の暮らすエリアと森林との望ましい距離とはどのようなものか。コストや利便性の追求といった課題にどう対応するのか。フリーディスカッションやシナリオシンキングを通して模索を重ねています。

2018.06.20 / 10.23

実学研修
ネクスレッジ株式会社

大学では学べない「社会」を学ぶ

少数精鋭の経営でバイオ製剤開発の技術支援を行っているネクスレッジ株式会社のもとで、会社の仕組みや新規法人の立ち上げの実際を学んだほか、「持続可能な製薬業」をテーマにディスカッションを重ね、起業家・経営者的な視点を踏まえてアイデアを洗練させていく過程について理解を深めました。One Earth Guardiansで目指す地球規模の問題解決のためには現実に即した適切な実行手段を選択する必要が生じてくると思いますが、今回の実学研修で学んだ「法人設立」を選択肢の一つとして捉え、より現実的で深い議論をしていければと考えています。(応用生物学専修 室 智大)

2018.08-09

実学研修
認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン

NPOでの学び
〜机の上だけでは地球医になれない〜

私は実学研修として、損保ジャパン日本興亜環境財団が主催する「CSOラーニング制度」に参加しました。この制度を通じて、認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパンにてインターンさせていただき、イベント運営、パーム油白書の作成、実際にボルネオ島に行く機会など、様々なことに関わらせて頂きました。
「現場」を見て、その状況に対して「地球医」として自分は何が出来るのだろうかと真剣に考えた時、自分にはまだ大学で学ぶべきことが山ほどあると気づきました。
机の上だけでは地球医になれない、だけど机の上で学ぶことも重要だ、そう学んだ研修でした。(農業資源経済学専修 近藤 巧)

2018.06-

実学研修
株式会社重次郎

畜産の現場に活かす農芸化学を考える

岩手県雫石町にある畜産農家のもとに2週間泊り込みで滞在し、朝夕の牛の世話、牛舎の堆肥出し、産直での花卉販売などを体験しました。また、畜産以外の部門それぞれの仕事内容や、地元産直組会の会長さんから地域の農業や産直の現状についてもお聞きしました。畜産の現場を肌で感じることで、近親交配による弱勢や子牛の下痢による発育不良、外国産飼料の価格高騰を畜産の課題として実感することができました。そしてこれらの課題解決が、畜産業を100年後も持続可能な産業にする上で不可欠であるとの気づきを得ました。例えば、肉質や育ちやすさに関わる遺伝子などゲノム情報を利用した交配や、微生物学の知見を用いた下痢改善、食品化学・栄養学に基づく国産飼料開発など、自身の専門である農芸化学分野からの畜産業への貢献の可能性を考えることができ非常に充実した実学研修となりました。(生命化学工学専修 茂木 郁也)

2018.08

賛同企業参加のWorkshop〈第2回〉

人材育成に向けた新しい道筋への提案

第1回ワークショップで見出された人材像の育成に向けて、どのようなプログラムを創って行くべきか、多種多様な分野からご参加の企業・省庁等の方々と考える機会となりました。各現場からのインプットを活かした講義や、アクティブラーニングによる課題解決型学習など、従来の大学教育では得難い体験をカリキュラムに反映させていく指針を得ました。

2018.02.28

シンポジウム

キックオフ公開シンポジウム
〜私たちは、100年後の地球に何ができるか〜

東京大学伊藤謝恩ホールにて、プログラムのお披露目となるキックオフシンポジウムを開催しました。SDGs時代における高等教育の可能性についての産官学鼎談のほか、特別講演・パネルディスカッションを通し、産業界、省庁、教育界からの本プログラムに寄せる期待などを聞くことができました。企業・省庁、メディアなどから大学生・高校生までと幅広く足をお運びいただきました。

開催報告

2018.05.18

賛同企業参加のWorkshop〈第1回〉

育成すべき人材像とは

目指すOne Earth Guardiansの姿とは?プログラムの理念に賛同する企業・省庁等の方々と共に議論し、考えました。ワークショップを通して得られた声からは、社会学・経済学的思考のできる人材、フレキシブルな人材、課題を発見できる人材、連携できる人材、タフな人材といったキーワードが浮かび上がりました。

2017.12.12