About

講座について

共生型新産業創出コロキウムは、環境と調和し共生しながら、
人々の多様なwell-beingを叶える「共生型新産業」の創出に資する人材の育成を目指す講座です。
2024-2025年度は「微細藻類」をテーマに据え、社会人と学生を対象に、
東京大学 大学院農学生命科学研究科・農学部にて開講しています。

Concept

講座のコンセプト

人類は技術を発展させながら地球上のあらゆるものを利用し、生活を豊かで便利なものにしてきました。しかしそれと同時に、地球に大きなダメージを与えてきたことも事実です。One Earth Guardians育成プログラムでは、ヒトと他の生物が共生できる100年後の地球の未来のために何ができるのか?を問いつづけています。

今、生物の力を活用しつつ生物圏に負荷をかけないバイオエコノミーの重要性が認知され、バイオテクノロジーを活用した産業による課題解決に期待が寄せられています。その中で、目先の効果や表面的な解決ではなく、真に解決すべき課題を見出し、科学的妥当性を持ってその解決にあたることのできる人材が求められています。

また、大きく変わっていこうとする社会において産業は、多様なかたちの幸福・well-beingを叶えるものである必要もあります。

この講座では、バイオものづくりなどで注目を集める「微細藻類」をテーマに据え、その生物としての特性に裏打ちされた可能性と課題、産業応用による環境や社会へのインパクトについて、科学的な知見や視座を提供します。受講者の方には、向かいたい未来とはどのようなものなのか、多角的な観点からビジョンを描くためのインサイトを得てもらうことで、微細藻類を活用した真に持続可能な“共生型新産業”を創り出すことのできる人材と、そのネットワークを生み出したいと考えています。

中西 もも

東京大学
大学院農学生命科学研究科
One Earth Guardians育成機構
准教授・アドミニストレーター

培われる力

  • 環境に与える影響を正しく評価できる科学リテラシー

  • 新たなビジネスとして成立させるビジネスモデル構想力

  • 新たな未来像を描けるビジョナリー力

  • 多様な意味での人々の幸福・豊かさの追求力

  • 人とつながり連携する巻き込み力

Structure

講座の構成

I. 講義

俯瞰的な視野と実行力を育むための、産学界の多彩な講師陣による分野横断・双方向型の講義

  • [part_a]共生型新産業に必要な幅広い視座と洞察力を育む
    keywords: 社会と環境 微細藻類のバイオロジー サーキュラー・バイオエコノミー ビジネス 人の健康と幸福 デザイン・アート

  • [part_b]微細藻類の活用に実際に取り組む企業の現場からのインプット

II. ハンズオン実習 *

微細藻類の採取や観察、培養、有用化合物の抽出工程・分析方法について、実際に体験しながら学ぶ。

III. ワークショップ

微細藻類を基点とする共生型新産業のアイデア創発や提案に向け、各受講者の視点を掘り下げつつグループワークや提案セッションを行う。

IV. フィールドワーク *

国内および国外における微細藻類活用事業拠点を実際に訪問し見学。関連事業者らも含めた交流機会を通じてネットワーク形成にもつなげる。

訪問先

  • [前期-国内]IMAT 一般社団法人日本微細藻類技術協会(広島県)、一般社団法人さが藻類バイオマス協議会(佐賀県)

  • [後期-国外]CHITOSE Carbon Capture Central(マレーシア)など

* については、できるだけ参加を推奨するが任意

Overview

講座の概要

時間

【時間】木曜5限 16:50~18:35

実習やワークショップ、フィールドワークなどの例外あり

対象

【対象】 社会人・大学生・大学院生

Voices

受講者の声

ある時は大学の池で藻を捕まえ、またある時は文化、法律、経営について学ぶ等、縦横無尽に社会を多面的に捉える機会が多くありました。同時に、科学的根拠や過去の歴史から、微細藻類の産業化の現実や課題を確認できたことも重要な学びでした。来年度は俯瞰的な視点を持ちつつも「何をテーマにどのような行動を起こすか」を考えたいです。

博士課程2年

勝村 智樹

環境を考慮した製品開発に携わってきたこともあり、微細藻類の可能性に興味を持って受講しました。微細藻類にとどまらない幅広い分野の講義を通じて、視野を大きく広げる良い機会になりました。また、社会人や学生との交流で行動力や積極性に触れ、多くの刺激を受けました。これらの学びを今後の仕事に活かしていきたいと思います。

塗料メーカー・開発技術

谷口 尚隆

文系学生にも微細藻類を学ぶ機会があること、私の目指す人材像がOne Earth Guardiansの理念と重なることから参加しました。多様な専門や経験を持つ仲間と学び、議論し、新たなものを生み出す日々に刺激を受けています。良きチームに感謝しつつ、目標である「人・地球・宇宙すべてが豊かな社会の実現に貢献する社会人」に向けて粘り強く取り組みます。

学部4年

古賀 真音

以前から微細藻類の持つ特性に魅力を感じて個人的に調べていましたが、専門的な知見が無い私には難しく、初めの1歩が踏み出せずにいました。この講座では、先生方や事務局、共に受講する大学院生のサポートがあり、楽しく学ぶ事が出来ています。今後は、ワークショップにてアイデアを具体化し、新産業を生み出したいです。

自動車部品メーカー・開発

柴田 悠介

Lecturers

講師

  • 五十嵐 圭日子

    東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授

    東京大学農学部卒業、大学院農学生命科学研究科修了。VTT Technical Research Centre of Finland Ltd 客員教授、NEDOフェローなどを歴任。200を超える論文や著書、日本学術振興会賞など数々の受賞の他に、酵素研究に関するギネス世界記録も保持する。
    専門はバイオマスからのエネルギーやマテリアル生産、生物圏に負荷をかけない経済活動であるバイオエコノミーの実現を目指す。人生の目標は、自然(特にきのこ)の力を未来社会に活かすこと。

  • 内田 まほろ

    一般財団法人JR東日本文化創造財団 MoN Takanawa: The Museum of Narratives開館準備室 室長

    2002-2020年、日本科学未来館で、科学とアートやデザインを融合した数多くの企画展、常設展の開発に従事する傍ら、Barbican Centreやグッドデザイン賞等、国内外でゲストキュレーターや委員を務める。
    JR東日本が開発するTAKANAWA GATEWAY CITYで、「100年先に文化をつなぐ」をミッションに掲げ、知と美、伝統と未来をつなぐ複合文化施設の開館準備に携わると共に、大阪・関西万博 テーマ事業シグネチャーパビリオン「いのちの未来」企画統括を務める。

  • 岡田 茂

    東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授

    東京大学農学部水産学科卒業、東京大学大学院農学系研究科博士課程中退、博士(農学)。東京大学農学部助手、助教授、准教授を経て教授。微細藻類によるバイオ燃料生産研究、特に脂質の生合成・代謝機構の解明を重視した研究を行っている。微細藻類を単に人間に都合の良いリアクターとは捉えず、その生物種の特性を十分に理解した上で、真にエネルギー収支、CO2収支的に意味のあるバイオ燃料生産の実現を目指している。

  • 小口 希

    株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 サステナ処方原料グループ グループマネージャー

    1999年大阪大学大学院理学科卒業後、株式会社資生堂に入社し、原料戦略Uにて勤務。2013年には横浜国立大学 工学博士学位を取得。2019年より原料統括グループマネージャー、原料開発室室長、循環型原料開発特任プロジェクトリーダーを経て、2025年よりサステナ処方原料グループ グループマネージャーを務める。
    化粧品におけるサステナビリティを原料開発から推進する役割を担い、循環型社会にシフトしていくための大きなソリューションの1つとして微細藻類の活用に注目し開発を推進している。

  • 笠原 堅

    株式会社ちとせ研究所 執行役員 Chief Innovation Officer

    北海道大学農学部卒業、東京大学大学院薬学系研究科修了。日本マイクロバイオームコンソーシアム 運営副委員長、研究開発部会長などを歴任。学生時代は天然有機化合物の単離構造決定から生合成遺伝子の機能解析。2007年に新卒でネオ・モルガン研究所(現ちとせ研究所)に入社。微生物の育種や腸内マイクロバイオームマネジメント、バイオ生産AIマネジメントシステム立ち上げに従事。現在は、藻類の用途開発と未利用バイオマスを活用した循環農業システムの事業開発を推進している。

  • 方 健太郎

    Exa Innovation Studio, Inc. Co-Founder

    東京大学法学部卒業後、国土交通省及びBCGを経て、2010年にパリ及びロサンゼルスを拠点としてExa Innovation Studioを創業。自社・他社を問わず様々な新規事業の立ち上げに取り組む。専門分野は、ICT、運輸、生命科学等におけるイノベーションの開発・事業化の他、観光、芸術振興等多岐に渡る。常に、過去の常識や固定概念に捉われことなくグローバルな視野から取り組むべきことを考察し、実行動に移すよう心がけている。2006年よりパリ在住。

  • 久保田 泉

    国立環境研究所 社会システム領域 地域計画研究室 主幹研究員

    学習院大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士後期課程修了、博士(法学)。専門は国際環境法。気候変動問題を中心に、より実効性の高い制度にするためにはどうしたらよいかについて研究している。
    2002年より国立環境研究所社会環境システム領域NIESアシスタントフェロー、その後、同研究員、同主任研究員を経て、2021年より現職。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第3作業部会主執筆者。

  • 田辺 雄彦

    国立環境研究所 生物多様性領域 主幹研究員

    東京大学農学部農芸化学科卒業、筑波大学生命環境科学研究科にて博士(農学)取得。国立環境研究所ポスドクフェロー、筑波大学准教授、株式会社アルガルバイオ等を経て現職。専門は藻類ブルーム、藻類の多様性解明と有効利用。国立環境研究所・微生物系統保存施設(MCC-NIES)責任者として微細藻類株の収集・保存・分譲業務にも携わる。多様な有用特性を持つ藻類株を、多くの産学の研究者に地球環境保全のために利活用いただきたいと考えている。

  • 永野 友子

    富士通株式会社 Global Solution Business Group Strategic Planning Unit Manager

    長崎大学大学院環境科学研究科を経て、オランダ・ライデン大学大学院にてIndustrial Ecologyを修了、長崎大学にて博士号(環境科学)取得。産業技術総合研究所にてアジアのバイオマス利活用の持続可能性評価、富士通研究所にて環境技術の研究開発に従事。富士通株式会社にて脱炭素戦略を担当、2023年より新事業モデル「Fujitsu Uvance」のSustainability Transformationに資するオファリング企画を担当。”環境の価値を社会実装する。そして、笑顔の輪を広げる”ことをパーパスとして環境課題解決を目指している。

  • 西村 勇哉

    NPO 法人ミラツク 代表理事 / 株式会社エッセンス 代表取締役 / 大阪大学社会ソリューション イニシアティブ招聘教授

    大阪大学大学院修士課程(人間科学)修了。人材開発ベンチャー企業、公益財団法人日本生産性本部を経て、2011年にNPO法人ミラツクを設立。セクター、領域を超えたイノベーションプラットフォームの構築と、大手企業の新領域事業開発支援・研究開発プロジェクト立ち上げの支援、未来構想の設計などに取り組む。2021年に株式会社エッセンスを設立、同年9月に自然科学、社会科学、人文学を領域横断的に扱う先端研究者メディアesse-senseをリリース。知のアクセスを実現するKnowledge Tech企業として、知の情報化・資本化・民主化に取り組む。

  • 福井 裕美子

    武蔵塗料ホールディングス株式会社 代表取締役社長

    武蔵塗料グループのCEOとして、塗料業界での豊富な経験を活かし、グローバルな事業運営に注力。30以上の国籍の顧客と10か国の工場を擁する組織を統括し、持続可能な成長とダイバーシティ推進に努めている。近年は、バイオマス原料を活用した新製品開発や、社内大学の設立を計画し、次世代リーダーの育成に力を注いでいる。ビジョンは、環境に優しい塗料技術で業界をリードし、企業の社会的責任を果たすこと。

  • 福永 真⼸

    東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授

    東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了(博士)。立教大学、大阪府立大学(現・大阪公立大学)を経て現職。しまなみ海道近辺の瀬戸内海沿岸と岩手県をぐるりと回って育つ。環境社会学と環境倫理が専門で、サケやニジマスなど特定の生きものやモノと人間との関わりを柱に、人間とは何か、自然とは何かを探求してきた。現在は海藻養殖にも着目し、気候変動への適応がもたらす人間存在および自然存在への変化を追いかけている。惑星倫理についても食という観点から探求中。

  • 藤田 朋宏

    ちとせグループ Founder & Chief Executive Officer

    東京大学農学部卒業、東京大学大学院農学生命科学研究科修了。外資系コンサルティング企業を経て、2006年ちとせ研究所の代表取締役に就任、2013年にちとせグループとして再編。国内外にバイオ関連企業を設立し、日本の研究開発の成果を東南アジアや中東をはじめ各国で事業として展開している。2019年、内閣官房 イノベーション政策強化推進のための有識者会議 バイオエコノミー戦略有識者に就任。産官学のそれぞれの立場から、日本が世界のバイオエコノミーを牽引するために尽力している。

  • 星野 孝仁

    ちとせグループ 執行役員 Chief BioEngineer

    東京大学農学部生物システム工学科卒業。2010年アリゾナ大学にて博士課程修了後、2015年までアリゾナ大学にて上級研究員として微細藻類バイオマス大量生産を目的としたフォトバイオリアクターの開発・研究に携わる。2015年ちとせ研究所(ちとせグループ)に入社、事業開発職を担当。人々の生活が豊かなものであり続けるために、藻類の大規模産業化・普及を目指して多数の藻類関連事業を牽引している。現在は100 ha規模で藻類を生産するために奮闘中。

  • 柳田 庸子

    マーケティング・コンサルタント / アート・レンダリング・ディレクター

    津田塾大学卒業。マルハ株式会社(現・マルハニチロ)、イセ食品株式会社(現・たまご&カンパニー)にてマーケティングの経験を積み、2011年に独立。ブランディングなどの戦略マーケティングを得意とし、企業のコンサルティングを行う。近年は、VUCAと言われる先の見えない時代に企業が柔軟に対応していくために、アート思考が有用であると考え、ビジネスに実装するサービスに取り組んでいる。

  • ⽶倉 誠一郎

    一橋大学名誉教授/デジタルハリウッド大学院特命教授/県立広島大学大学院経営管理研究科研究科長/ソーシャル・イノベーション・スクール学長

    一橋大学 社会学修士、ハーバード大学 歴史学博士PhD。一橋大学イノベーション研究センター教授、法政大学大学院IM研究科教授、デジタルハリウッド大学院特命教授などを歴任、Creative Response Social Innovation School学長のほか、日本ファシリティマネジメント協会会長や複数企業の社外取締役、NPO法人の理事を務める。専門はイノベーションを核とした経営戦略と組織の歴史的研究。座右の銘は、「転んだ奴を笑わない」「Only crazy people can change the world」。

Contact

お問い合わせ

東京大学 大学院農学生命科学研究科・農学部
One Earth Guardians 育成プログラム事務局

Address: 〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1

Email: office@one-earth-g.a.u-tokyo.ac.jp

Web: www.one-earth-g.a.u-tokyo.ac.jp